立命館大学実践教育学会 第7回研究大会


 10月15日に立命館大学朱雀キャンパスで開催された標記の大会に参加してきた。テーマは「学校教育の未来 『エージェンシー』を育てるために私たちができること」である。大会は3部構成であったが、時間の関係で第一部と第二部に参加した。まずは、第一部の実践報告会についてコメントしたい。
 実践報告会では、
①神山まるごと高専という挑戦
②総合的な学習の時間におけるふるさと教育の実践
が報告されていた。①の神山まるごと高専については、マスコミでも大々的に取り上げられていたので、神山高専はエージェンシーをどのように育てているのかが興味深かった。しかし、結論から言うと、確かに神山高専はエージェンシーを育てているのだろうが、すでに入学してきた1期生は、「エージェンシー満載!」という生徒たちであり、どのように育ったかという報告はほぼなかった。どちらかと言えば、開校に向けた取り組みが主であったように思う。私が期待したのは、「エージェンシー満載」の生徒達が集まって、どんな化学反応が生まれたのかということである。+の反応、-の反応、それぞれあるだろうが、生徒たちは神山高専と言う全寮制のシステムの中でどのように成長しているのかを知りたかった。唯一面白かったのは、課外活動の部活動として農業クラブが発足したことである。デザイン×モノづくり×起業で入学してきた生徒たちが、農業に興味を持ち始め、実際に農業に従事している取り組みは面白いと思った。彼らは、なぜ農業を始めたのか?土地・農具はどのように調達したのか?長期休業中の畑・田の管理はどのようにしたのか?いろいろな課題があり、これを克服することでエージェンシーが育つと思うが、聞きたい内容が聞けなかったのは残念だ。

 ②については、教師のエージェンシーが育成された報告としてはとても面白いが、果たして生徒のエージェンシーがどのように育ったのかは、皆目聞くことができなかった。取り組みは、岐阜県の海津市の平田中学校の取り組みである。発想は良いと思う。地域貢献で中学生に何ができるかというテーマだ。ところが担当の先生が、いろいろ考えて「南濃みかん」を使ったジュースと決めてしまった。生徒たちは、ジュースのラベルを考えたり、販売のボランティアを経験したりしているが、それも先生のお膳立てという面が拭えない。どうすれば、生徒が地域貢献に関われるかを考えて、いろいろな地域の人たちと繋がっていく先生の成長はよく理解できた。若い先生ながら、「よく頑張っている」と言えるだろう。相談相手の学年主任も素晴らしい(地域貢献で学校と行政を繋げた)と思うが、ほぼ一人でいろんなことをやっている。それももう少し、学年や学校を巻き込んでやればいいのにと思った。販売のボランティアも、自身が顧問をしているバスケ部の生徒達に声をかけていた。果たして、生徒のエージェンシーはどのように育ったのかと思う報告だった。

次回は、OECD Education2030に関わった白井俊さんの話をしたいと思う。


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