ネット記事を見ていると、弁護士JPニュースで「カンニングで『謹慎処分』大阪・有名進学校2年生が自死 “写経80巻”課題と『卑怯者』のレッテル…教師による“懲戒”は本当に必要か」という記事を見つけた。子どもの権利と生徒指導をテーマにした「学校事故・事件を語る会」の大集会が5月31日から2日間、兵庫県神戸市内で開かれたのである。その集会の中で報告されたのが、2021年12月に起きた、大阪府の有名進学校・私立清風高校での男子生徒(当時17歳)の自死事件である。
事件は、定期テストでカンニングをしたことで、謹慎8日間の処分を受けた生徒Aが、指導翌日に自ら命を絶った事件である。今でもこの事件の事はよく覚えている。詳しくは、下部に示すリンクで読んでほしいのだが、問題はカンニングに対する指導が適切であったのかという点だ。
学校側は生徒Aに対して、
① 全科目0点
② 家庭謹慎8日(この間、友人らとの連絡の禁止)
③ 写経80巻(1巻278文字。筆ペンは使用不可。必ず墨で書く)
④ 反省文作成(400文字×2枚。毎日書く)
⑤ 反省日誌作成
⑥ 生徒手帳の中にある「心得」を書写(19ページ分)
⑦ 大学への学校推薦を行わない
という指導を課した。
私の公立高校での経験から言うと、①の全科目0点は妥当性を欠く。府立高校では、当該科目が0点になる。カンニングしているかどうかわからない他の科目まで0点にするのは、懲罰的であり教育的でないからだ。②は妥当だろう。③は妥当ではない。後で詳しく書く。④はグレーゾーンだ。毎日800字×8=6400字を要求することが妥当かどうか。⑤は妥当である。⑥はグレーゾーン、写経80巻と合わせて考えれば、妥当とは言えないだろう。⑦は妥当だろう。
写経80巻だが、8日で80巻だと1日10巻。1巻は278文字あるという。1日2780字である。それも墨で書けという指示だ。紙を汚せば、一からやり直しだ。指導を受けた生徒は、自殺する未明までに22巻分書いていた。日本体育大学の南部さおり教授(スポーツ危機管理学、医学博士)は、講演の中で「圧倒的な孤独感の中で、『この苦しみを直ちに終わらせたい』との強い思いがあったのではないか」と生徒Aの当時の思いを推察している。
この事件を取り上げるのは、School Liberty Networkの報告書でも指摘されているように、私立学校の不適切な教育が原因で、生徒の人権が侵害されている事象が後を絶たないからだ。
例えば、カンニングによる全科目0点問題。府立高校も私が教師になった頃は、全科目0点だった。しかし、その指導が問題ではないかという問題提起が起こった。停学も行い、全科目も0点というのは、二重の懲罰ではないかというのだ。当該科目は、正当に評価できないために0点は妥当であるが、他の科目までというのは二重の懲罰に当たるというのである。これを聞いたときは、「そんなことでカンニング抑止ができるのか」と思ったが、妥当な判断であると思う。この判断は、教育委員会が行った。言いたいことは、公立学校には教育委員会からの指導があるという事だ。
ところが、私立高校にはない。大阪府教育庁にも私学課というのがあり、それなりに指導監督の権限があるが、このような指導内容にまで踏み込まない。私立学校の教育内容は、野放しに近いのである。前にも書いたように、私立高校の無償化で私学助成金に加えて、大量の税金が私立高校に投入される。生徒を自死にまで追い込むような指導をしている私立高校に税金をつぎ込んで良いのかという事なのだ。もっと教育委員会の指導監督の権限を強めるように法改正を行う必要があるだろう。
私立高校の「公立化」、公立高校の裁量権拡大を行う必要がある。
カンニングで「謹慎処分」大阪・有名進学校2年生が自死 “写経80巻”課題と「卑怯者」のレッテル…教師による“懲戒”は本当に必要か
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