「社会正義によるキャリア支援」の正義とは?


 6月1日に「社会正義のキャリア支援」についてブログを書いたところ、こんなコメントをいただいた。
「元記事を読んで,「社会正義」とは何かなと興味が湧きました。正義は一見正しそうな言葉ですが、一方でかなり危うい言葉でもあります。」
というものだ。確かに「正義」という言葉には、危うさを伴う。ロシアにはロシアの正義があり、ウクライナにはウクライナの正義がある。一方的に侵略したロシアにも、「NATOは、当方に拡大しないと言ったではないか」という祖国防衛の正義があるのだ。ウクライナには、国の存亡をかけるという正義がある。その双方の正義がぶつかり合って、戦争は今も続いている。ガザの紛争も然りである。世界には様々な「正義」が存在するのだ。

 そこで、この「社会正義によるキャリア支援」が掲げる「社会正義」とは何かを紹介したいと思う。

(1)応報的正義ー頑張った人は頑張った分だけ報われる(機会の平等)
 頑張った人は頑張った分、報酬を得る。頑張らなかった人は頑張らなかった分だけ、報酬が減るという正義。ただし、競争するにしても、公平・公正なルールのもとで競争する。すなわち、そういう公明正大な競争をするにはスタートラインで不利があってはいけない。だから、スタートラインは平等にする。この正義の考え方が、生活保護などの公的扶助、奨学金、年金などの公的支援を支えるロジックになる。障がいがある生徒への「合理的配慮」もこのロジックだろう。

(2)分配的正義ー多く持っている人は、少ししか持っていない人に分け与える(結果の平等)
 本人の頑張りとは関係なく、結果だけを見て、多く持っている人は少ししか持っていない人に分けるという意味で公平・公正を追求する。この正義の考え方が、富裕層から富を集めて困窮した人に分け与える課税(累進課税等)による再分配政策や、万が一に備えた社会保障制度の考え方につながる。

(3)承認的正義ー少数派の存在を認め、声を聞く
 話し合いをして多数決をして決めるというプロセスは、誰も否定しようのない民主主義社会における意思決定の重要な手段。しかし、それでは、多数決に負けた少数派の意見は反映されにくくなる。そこで、まず、少数派が存在しているという事を認めることが大切であり、それこそが社会正義の大前提であるという考え方である。この承認的正義に関して、海外のキャリアガイダンスの文献では、「VOICE」という単語で表現されることが多い。

 現在放映されている朝ドラ「あんぱん」も戦争の色がどんどん濃くなってきた。初回に「正義は逆転する」とつぶやく嵩は、これから「何が正義か」を悩み続けるだろう。その結論が、「おなかをすかししている人に、パン(食料)を上げる」という事の絶対的な正義に行き着くのだと思う。これは、マイノリティに対する社会正義であり、今回の「社会正義のキャリア支援」にも通じることではないかと思う。


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