7月6日の読売新聞のスポーツ面、「変わる部活動 未来へ」で陸上男子400m障がい世界選手権メダリストの為末大氏が、部活動について自分の考えを述べていた。全面的に賛成だ。いや、それ以上に大いにリスペクトする。為末氏の提案は、これだ。
★日本のスポーツは、学校の部活動という世界でも類を見ない制度に支えられてきた。しかし、今やそれは成り立たなくなった
★部活動は、週に2,3日で1回につき2時間ではどうか
★全国大会をなくし、地域ごとのチームで総当たり戦とすれば、より多くの生徒が出場できる。「補欠」という概念も無くなる。
★曜日ごとに違う競技に取り組んでも良い。一つの競技に打ち込むのは高校からでも遅くはない
ずっと、私が主張してきたことそのままを言ってくれている。諸手を挙げて賛成だ。私のような名も無い人間が言うよりは、スポーツの第一線で活躍した為末氏のような方が言ってくれる方が、余程影響が大きい。全中を主催する教職員たちは、この為末氏の意見に真摯に耳を傾けるべきだろう。少し前に、全中の競技縮小が報じられ、学校教育やスポーツに関わる学識者は「画期的」と評したが、「何が画期的か?」と思っていた。全中を維持するために、マイナー競技を切り捨て、スリム化する生き残り策ではないかと思う。本当に生徒のこと、教員のこと、スポーツの事を考えているのなら、為末氏の意見を実現すべきだろう。
私が校長を務めた国立大学系の附属中学校でも労働基準局から是正勧告を受けたことをきっかけに、「働き方改革」が急務であった。焦点になったのは、部活動である。改革の柱は、部活動指導員の配置と「デュアルクラブシステム」である。「デュアルクラブシステム」とは、私が勝手につけた名前で、少なくとも二つ以上の部活動を経験するというシステムである。為末氏の考えを表現するとすれば、「マルチクラブシステム」というのがより正しいだろう。例えば、サッカー部は、週最低1回陸上部に行き、陸上部と一緒に練習する。同じく陸上部は野球部やテニス部と一緒に練習する日を設け、球技を楽しむというようなやり方だ。文系のクラブでも体力を要する吹奏楽部は、週に1回運動系のクラブを体験し、基礎体力の向上を図るのもありだろう。為末氏も同じことを考えていたことに嬉しさを感じる。私が去った後、この構想はおそらくしぼんだだろうが、先端的な考え方であったと自負している。
為末氏の尊敬すべきところは、部活動を「探究学習」と捉えているところだ。運動能力を向上させたいと突き詰めていけば、運動力学が必要であり、そのためには物理や数学が必要になる。そして生理学を極めようと思えば、生物も必要になるだろう。こういう捉え方を学校の教師もするべきではないだろうか。生徒が最も関心があり、身近であるもののひとつである部活動が、「探究の場」になるとは素晴しいことではないか。
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