泉南市重大事態調査報告を読んでみた

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 泉南市の中学生自死事案について、先日教育長が会見を開き謝罪した。「生徒の家庭と十分な信頼関係が築けなかった」「当時は最善の対応と考えていたが生徒の気持ちに寄り添った対応ではなく、問題があった」と述べた。いったい何があったのか、報道の切り取り方ではわからない部分が多いので、早く調査報告書を読みたいと思っていた。泉南市のwebサイトに報告書が掲載されていたので(最後にリンクあり)、読んでみた。これほど、保護者・児童生徒に寄り添わない事案は珍しいというのが、正直な感想だ。小学校の教員F、2代にわたる小学校の校長、そして教育委員会の面々、問題を解決しようと何をしたのかと思う。唯一、中学校の教員Tだけが、生徒・母親との信頼を築いていたように思う。自死した生徒の葬儀に参列できたのは、この教員Tのみだ。

 事の発端は、教員Fが兄を誹謗中傷したところから始まる。調査報告書にはこんな記述がある。

平成29年度(当該児童小学3年、兄5年)12月
授業が始まって5分くらい経過した時、兄の担任Gが廊下にいた兄を見つけ、教室まで連れて行った。担当の教員Fは、兄を座らせて、クラス全体に、「ニート」「どろぼう」という意味の言葉を使いながら、他の児童に対し、兄を例に出して、このままだと将来ニートのようになるかもしれないと問いかける形で指導を行った。教員Gは、この様子を見ていたが、注意しなかった。


全ては、ここから始まるのだ。この教員Fの対応に母親は不信を募らせる。この件について、校長に報告が上がったのが1月。年をまたいでいるのだ。教員Fも教員Gも重要な指導の過ちであることを認識していなかったのだろう。学校や教育委員会の対応について、調査報告書は次のように指摘している。

たしかに学校としてやるべきことをやったという意識があったかもしれないが、それは客観的な側面に重点を置いたものであって、決して兄の傷つきやその保護者の心情に添ったものではなかった。さらに、すべて後手に回っていたことや教員Fの反省が足りないという認識もありながら、この件について、その後は特段の対応をしてこなかった。
また、教育委員会の対応においても、母との電話連絡を学校に伝えたり、助言を行ったりしていたものの、この1~3月の時点において府教委への報告をおこなった記録もなく、人事についての言及もないことを踏まえると、この問題を上述のように、児童の心を傷つけるだけでなく、その後の成長にも大きな影響を与える行為、児童の尊厳や人権を著しく侵害するハラスメント行為として捉えられていなかったと言わざるを得ない。


 この泉南市の教育委員会、学校、そして教員T以外の教員の対応を考えると、「教育委員会の質の低下」「学校管理職の質の低下」、「教員の質の低下」は顕著ではないかと思ってしまう。特に、教員Fは、「若手の教員」のようである。こんな資質しか持ち合わせていない教員が採用されていることに、学校現場だけでなく、国民全体が危機感を持つべきだろう。

是非、教育関係者は、この調査報告書を読んでほしい。そして、単に個別の事案として片づけるのではなく、教育委員会の質、学校管理職の質、教員(特に若手教員)の質を点検してほしいと思う。

泉南市中学生自死の重大事態の調査に係る報告


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