ビッグニュースである。共同通信社が、政府内で「教職調整額」を廃止し、教員に残業代を支給するように関係省庁に呼び掛けたという記事を配信した。これが真なら、政府の大きな方針転換である。「給特法」も廃止され、教員の残業に対して正当な対価が支払われることになる。誠に喜ばしいことだ。望んでいたことが実現する。これで、教育行政や管理職に長時間労働解消に向けたインセンティブが強烈に働くことになるだろう。なお課題も多いという意見もある。教員の勤務実態をどのように把握するのかという問題だ。しかし、国立大学系の附属学校や私立高校での実践例がすでにある。これを参考に、勤務実態の把握を行えば、十分に対応できるのではないか。
しかし、これが真なら、急な方針転換である。中教審でも議論し、多くの教育学者や教育行政に関わる人たちの議論を経て、給特法維持、13%の「教員調整額」の引き上げ、などが決定し、文科省も財務省にこの方針の下、概算請求を財務省に行っている。この人たちからしたら、「その議論は何だったのか」と梯子を外された気分だろう。文科省も同様だ。このような検討を政府が行うことになった要因は、一つは、衆議院選の与党の敗北が関係しているのかもしれない。としても、どのような政治力学でこのような検討を政府が始めようとしたのか、真相はブラックボックスである。もう一つは、教員不足の深刻化に対して、危機感を持つ動きがあったのかもしれない。このブログでも書いたが、高知県の辞退者は深刻であり、同じような傾向が全国で起こっているのだ。例え「教員調整額」を引き上げても、教員の長時間労働を嫌い、教員確保が難しいという判断があったのかもしれない。
ただし、これですべてが解決するわけではない。やっとスタートラインに立った段階だ。ここから、教員の仕事量を如何に減らすかという取り組みが、今度は真剣に行われなければならない。今までは、長時間労働であっても、所詮「定額働かせ放題」となっていたからである。まずは、教育の働き方改革で示された中教審答申などを参考に、「教員の仕事の仕分け」を徹底的に行う必要がある。そのためには、人材の投入も必要であるとともに、保護者・地域の理解が必須だ。税金で残業代を支払われるわけであるから、「税金の使い道」を考えれば、学校に過剰な負担をかけることを避け、保護者がすべきことは保護者が、地域で担えるものは地域で担うということを考えなければならない。その際、コミュニティスクールというシステムは、このような議論ができるプラットフォームとなりうるだろう。保護者も理不尽な要求を控えなければならない。文科省や教育行政は、保護者による教育現場での「カスタマーハラスメント」に対応する指針を示さなければならないし、広く世間に周知する必要がある。
最も危惧しなければならないのは、教育行政・管理職による「時短ハラスメント」である。とにかく、多くの管理職は、経営マネジメントに慣れていない。特に服務管理においては、教員上がりの管理職は素人だ。今まで、「定額働かせ放題」の中で仕事を続け管理職になったわけであるから、「時短」の感覚が備わっていない。その状況で、教育委員会から「時短しろ、時短しろ!」と掛け声だけかけられたら、マネジメント能力の低い管理職は、「早く帰れ!」としか教員に声をかけない。これでは、「時短ハラスメント」の温床になる。時短するには、仕事量を減らさなければならないのだ。
果たして、この報道、どこまで信ぴょう性があり、政府はどこまで真剣に検討しようとしているのか。まだまだ注視する必要がある。
公立校教員に残業代支給を検討 定額廃止案、勤務時間を反映
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