東大「推薦入試」

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 3月26日の読売新聞教育欄に「新学力 第2部変わる入試」が掲載された。第1回は、東大が「推薦入試」を導入した波紋だ。紹介されていたのは、東大薬学部に推薦入試で入学した秋田県立秋田高校の桜田さんだ。桜田さんの詳しい話は、新聞記事を読んでいただければと思う。興味を引いたのは、この秋田高校は「総合型・学校推薦型選抜対策室」を設置し、推薦入試対策を強化したことだ。16人の教員が所属しているというのだから、相当大きな組織に違いない。中心は、遠藤教諭だ。遠藤教諭は、次のように語っていた。

「東大が推薦入試を導入したことは、社会が求める人材も変わったということ。高校も社会のニーズを意識して生徒を育てる時代になったと思う」

まさにその通りだ。私が高校で校長をしていたとき、高大接続改革の議論が活発に行われた。この議論は、ほぼとん挫したと言われているが、大学入試に「知識・技能」を中心的に測る一般入試以外に、「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう社会性」を測る総合選抜型入試が大々的に導入されるようになった。この新しい入試の導入成果が明らかになってきたと言えるだろう。
 私が勤めた学校は、決して超進学校ではなかったが、多くの生徒が大学進学をめざす進学校だった。そこで、一般入試ではなく、総合選抜型入試で勝ち抜く「尖った生徒」を育てようと先生方に呼び掛けた。ところが、先生方自身が一般入試を勝ち抜いてきたがゆえに、どうも私の言っていることにピンとこなかったようだ。今から振り返れば、私の訴えがうまく浸透しなかったと言わざるを得ない。ただ、1点、私がめざしていたことの成果があった。それは、教員からではなく生徒から起こった。ある生徒が海洋生物に興味があり、その研究をしたいと考えていたのだ。しかし、当初は大学の偏差値序列の中で受験を考え、自分のやりたいことを諦めようとしたらしい。しかし、私の考えを「校長通信」で知って、自分のやりたい研究ができる大学について全国を視野に調べつくした。そして、唯一自分のやりたい研究に最も近いことができる国立大学を見つけたのだ。そして、先生方の支援もあり、見事に合格した。私は、このような生徒が現れてくれたことが、本当に嬉しかった。

 さて、神戸大学「BAD  BOYS」である。「京阪神」という序列の中で位置づけられる神戸大学であるがゆえに、優秀な学生が入学している。しかし、今回の事件をみると、「あなたたちは、何をするために大学に入ったのか?」という根本的な問いを発せざるを得ない。

「視野の狭い受験勉強のみに意を注ぐ人よりも、学校の授業の内外で、自らの興味・関心を生かして幅広く学び、広い視野や深い洞察力を真剣に獲得しようとする人」

これは、東大の選抜方針で示された「期待する学生像」だ。神戸大学は、果たしてどんな「期待する学生像」を示して、どんな入試をしているのだろう。「BAD BOYS」は、あまりにも情けない神戸大学の学生たちだ。


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