文字(本)が読めるということ

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 10月27日の読売推進新聞に秋の読書月間に関するアンケート調査が出ていた。読書と書店に関するアンケートだ。なかなか面白い調査である。「本をたくさん読んだ方が良い時期はいつか」という調査項目がある。圧倒的に小中学校時代だというのだ(一番下にアンケート結果のグラフを掲載)。果たしてそうだろうか。今私は、「チ。地球の運動について」というアニメに嵌っている。本当に面白い。前にもブログで書いたが、舞台は中世。キリスト教と思われる宗教が天動説を唱えている。それに対して、地動説を唱える人たちの物語なのだが、これほど真理を探究するということに命を燃やせるだろうかと考えさせられるアニメである。大人も読むべきだ。そのアニメの一節に「文字を読める」ということについてのやり取りがある。

 やり取りするのは、下級市民と言われている文字を読めないオクジ―と、天才的頭脳で地動説に惹かれていく12歳の少女ヨレンタの会話だ。以下、その場面のセリフを引用する。第3集174ページからである。

オクジ―:文字を読めるって、どんな感じなんですか?
オクジ―:皆平然と読んでいるけど…ちょっと前までは、俺の人生で文字読める人なんて…組合の先輩一人ぐらいしかいなかったもので。
ヨレンタ:誰にも言いませんか?
オクジ―:は?
ヨレンタ:私が今から言うことを、誰にも言いませんか?
オクジ―:‥‥? は、はい。
ヨレンタ:…C教徒としてこんな表現を気軽に使っちゃいけないことはわかっています。…でも、その表現以外で表せないから、言いますけど…
ヨレンタ:文字は、まるで奇蹟なんですよ。
オクジ―:なっ!?
ヨレンタ:もっ、勿論救世主様が起こす奇蹟とは全く別種のものですよっ!
ヨレンタ:…でも、本当に文字はスゴいんです。
ヨレンタ:アレが使えると、時間と場所を超越できる。
ヨレンタ:200年前の情報に涙が流れることも、1000年前の噂話で笑うこともある。そんなの信じられますか?
ヨレンタ:私達の人生はどうしようもなく、この時代に閉じ込められている。だけど、
ヨレンタ:文字を読むときだけはかつていた偉人達が、私に向かって口を開いてくれる。その一瞬、この時代から抜け出せる。
ヨレンタ:文字になって残った思考はこの世に残って、ずっと未来の誰かを動かすことだってある。
ヨレンタ:そんなの、まるで…
ヨレンタ:奇蹟じゃないですか。
オクジ―:そ…、そんなに。
ヨレンタ:はい、そんなに。

どうでしょう、このオクジ―とヨレンタの会話。この場面を読んだときに、正直ものすごく感動した。私達は、今情報が氾濫している時代に生きているし、日本人のほぼ100%は文字が読める。ちょっとスマホをいじれば、そこに欲しい情報がある。このヨレンタとオクジ―の「文字」という言葉を「本」という言葉に置き換えれば、私たち現代人が、読書する意義が明確に見えてくると思う。
 このように考えると、たくさん本を読むのは小中学校時代だけではない。その年齢に応じた読書が求められるのだ。人生を歩むにしたがって読む本も変わってくるし、同じ本でも違うことを投げかけてくれる。まさに「かつての偉人達が、私に向かって口を開いてくれる」のだ。

情報の氾濫に流される現代人は、もう一度読書の意味を問い直した方が良いのではないだろうか?


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