教訓は生かされない


 4月10日の夕方、奈良県の帝塚山学園で中高生6人が雷に打たれ、1人が心肺停止の状態だという。当時、奈良県には雷注意報が発令され、雨が降っており、顧問の付き添いの下、サッカー部と野球部がグラウンドで練習をしていたという。当時がどういう状況だったのか、これから警察が調査をするらしい。
 過去に大阪でも同じような事故が起こった。1996年に高校生のサッカー大会中に落雷があり、生徒一人が重度の後遺障害を負ったのだ。この事故は、裁判になり大会の主催者及び学校側の監督責任が問われた。裁判の争点は、落雷の予測が可能だったのかという事である。当時は、遠くの方で雷が鳴っていたという。大会の主催者は、「遠いので大丈夫だろう」と試合を継続したのだ。しかし、落雷はあり、裁判では学校側が敗訴となった。
 この事故と裁判の結果は、広く教育界に広がり、学校での危機管理が問われることになったと思っていた。しかし、そうではないと思い知ったことがあった。私がある高校に校長として赴任した時に、放課後のクラブ活動中に雷が鳴った。ところが、屋内への避難を促す放送が流れないのだ。校長室から出て、運動場を見ると生徒たちが活動をしているではないか。私は、教頭に屋内退避の放送をすることを指示し、運動場に走ってすぐに活動を止めて屋内退避することを指示した。この裁判のことが当然の事のように、教員の頭にあると思っていたのだが、実はそうではなかったという事だ。なかなか、教訓は生かされない。

 今回の事故、おそらく裁判になるだろう。争点は、落雷が予測可能だったのかどうかだ。予測可能と判断されれば、安全配慮義務違反となる。気象条件は落雷の危険性を示していた。顧問はどのように対応しようとしていたのだろう。避難行動の途中の事故なのか、それとも活動を停止させる指示は出ていなかったのか、管理職はもちろん、全ての教員が注視しなければならない事故だ。


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