教育行政は教員を守らないー富山県・滑川市

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 7月5日、富山地裁は、くも膜下出血で倒れた男性教諭を労災と認定し、富山県と滑川市に対して、約8300万円の支払いを命じる判決を下した。詳しい事情は、インターネットに掲載されているので、以下のURLを見てほしいが、発症2か月前の時間外勤務は125時間、そのうち98時間が部活動での時間外勤務という凄まじい実態である。

【過労死】部活動は「教員の自主的活動」と反論も自治体に約8300万円賠償命令 遺族「二度と同じ思いを…」 (msn.com)

 この記事を読んで、教員ならだれもが立腹するのが、県と市の主張である。「部活動はあくまでも『教員の自主的活動』だったと反論。顧問としての業務が時間外勤務にあたるかが裁判の争点」と記事には書かれている。確かに、部活動は課外活動であり、教員がどのようにかかわるかについては、「教員の判断」に委ねられている。しかし、である。「部活動に関わる、関わらない」について自分の判断でできるなどと余裕のある教員は、どれだけいるか!そんな学校はどこにあるか!強豪校であろうがなかろうが、生徒・保護者の要望に応えるべく、教員は部活動に関わっている。関わりたくなくても関わっている。それは、保護者の評価、生徒の評価があるからだ。熱心に部活動に関わる教師を「良」とする風土が、教師を追い込んでいるのである。こんな実態をおそらく、県も市も知らないはずはない。知っているのである。にもかかわらず、「教員の自主的活動」とは、よく言えたものだ。自らの保身の匂いがプンプンする。
 妻がコメントされているように、「主人のことを美談で終わらせたくなかった。学校でやる部活なら、教員の健康を守りながらやってほしい」というのは、本当に切実な願いである。自らの生命を危うくするまでにいかなくても、多くの教員は自らの人生を犠牲にしながら、生徒・保護者のために働いている。もう、美談で終わらせるのは止めよう。犠牲者が増えるばかりだ。「もう二度と私たち家族みたいな思いをする方たちをうんでほしくない」という妻のお思いを、本当に実現しなければならない。
 現在、文科省、中教審で「教員の働き方改革」について議論をされているが、この事案についてもしっかり踏まえて議論をしてほしい。現在の議論の方向は、教職手当の増加、様々な手当の設立の方向である。この議論は、現状の学校現場を是認し、ある程度それに見合った賃金を払うという方向である。しかし、学校現場は、この事象が示すように、教員の生命に関わるような事案が少なくない。「命は金に換えられない」のである。給特法の廃止を是非進めてほしい。
 市は、「控訴しない」と決めたとあるが、当然だろう。逆に、「よく裁判したな」と思う。本来なら、労災認定の申請があれば、謝罪も含めすぐに認めなければならない事案である。それを「部活動は、自主活動」などという理由を振りかざして、何年も裁判するとは!「教育行政は教員を守らない」と思わせる典型だ。全国の教員は、声を挙げなければならない。日教組も全教も関係ない。教員の命を守るために、給特法の廃止に向けて立ち上がらなくてはならない。


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