教育産業のデータ活用-スタディサポート


 多くの進学校で採用されているのが、ベネッセが提供するスタディサポートという学力学習状況調査を行うツールである。これは、ベネッセが行う進研模試とリンクしたGTZ(学力到達度)という指標で国数英の成績が表される。多くの学校は、学年の最初の時期(大体4月中)に実施することが多い。年1回の実施である。ところが、年に1回の実施だと次の結果がわかるのは2年生の結果となり、この結果をどう評価してよいのかというのは、なかなか難しい。そこで私がいた学校では、年3回の実施を行うことが多かった。これには、様々な意味がある。
 まず、大阪のような都会の学校では、ほとんどの進学校が入学後のスタディサポートの調査から第2回(大体8月末から9月初旬実施)の結果で大きく落ち込むという結果になる。特に準進学校と言われる学校では、この傾向が著しい。この沈み具合をどうするかが課題なのである。一旦沈んだ成績は、2年生の第2回の実施あたりまで沈み続けるというのが、準進学校の傾向である。2年生の終わりごろから受験を意識し始め、勉強を開始する生徒が現れ始めるので上昇傾向に転じ始める。ところが、この受験勉強もいったん落ち込んだ学力を挽回するところから開始しなければならず、「学習の借金」は相当な量になっているというのが、通常だ。だから、この入学直後から始まる落ち込みをどれだけ抑えるかということに学校は力を注がなければならない。それがわかるためには、年1回の実施ではわからないのです。最低2回、できれば3回の実施が望ましいと思う。
 このスタディサポートは、学力だけではなく学習状況(学習時間)についてもGTZの結果が出ます。そうすると、次の4つのタイプに分類することができる。

タイプ①:学力も高く学習時間も十分な生徒
タイプ②:学力は高いが学習時間が十分でない生徒
タイプ③:学力は高くないけど学習時間が十分な生徒
タイプ④:学力も高くなく学習時間も十分でない生徒

 タイプ①の生徒は、この調子で頑張ってくれた良いが、問題はそれ以外のタイプだ。それぞれに指導の在り方が違う。タイプ②の生徒は、中学校で蓄えた学力の貯金で高校の勉強をしている。このタイプの生徒が、高校入学後に急落する傾向が強い。要注意のタイプだ。しっかりと学習時間を確保する指導が必要だ。
 タイプ③の生徒は、コツコツまじめな生徒に多く、ノートもきれいに整理されている生徒が多い。教員からすると「なぜ、この子は伸びないのだろう?」と疑問に思うタイプだ。このタイプの生徒は、学習する姿勢に問題がある。学習の内容を理解するよりも、ノートやプリントを整理することに力点を置いているだ。だから、時間をかけている割には、学力が伸びないことになる。一度「内容はどこまで理解している?内容を理解するためにノートを整理している?」と聞いてほしい。中学校までだと、この勉強スタイルで何とか大丈夫だが、高校になると通用しなくなる。
 タイプ④は、とにかく現状を打破するために、しっかりと学習時間の確保から指導するしかない。高校は義務教育ではないので、単位を修得しないと進級も卒業もできないから、危機感を持って学習する必要がある。
 このような学習指導をするためには、年に1回での実施ではなかなか難しい。私は、このスタディサポートの変遷を分析し、どのようなタイプの生徒がどのようなタイプに移ったかを校長通信で保護者あてに情報提供してきた。保護者には、自分の子どものデータはわかるが、学年全体の動向はわかりらない。自分の子どものGTZの変動と学年の変動をリンクして考えてもらうために情報提供をしたところ、「学校の状況がよくわかる」「今まで疑問に思っていたことが解決した」などの感謝のコメントをいただいた。こうやって、保護者と連携するのも、校長の学校経営の一つだと思う。


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