教員の不人気による教員不足からくる事態が顕著になってきた。教員の出身大学で、偏差値が50未満の大学出身者が4割近くになっているという事が判明した。「教職不人気で加速する『教員の学力低下』の深刻度」という題で、Newsweek日本版が2月5日に発表したのだ。旺文社の『大学の真の実力2025』に掲載されている各大学の学部別の教員就職者の数をもとに、関東1都6県の231大学・865学部からの教員就職者は9454人(2024年春)である。この教員就職者を、出身大学のタイプで分けてみた表を基に、私がグラフ化したのが、次のグラフだ。
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全就職者、公務員と比べて、極端に偏差値50未満の私立大学から教員になっている者が多い。偏差値が50未満という事は、全体の中で下位に位置付けられるという意味だ。つまり、社会の中で学力的に低いと位置づけられている学生が、学校現場で児童・生徒に教えているのである。記事にも、
「倍率が高かった20年前であれば採用されなかったような人が、教壇に立っている」
と指摘している。授業参観で保護者が教師の間違いを指摘することが頻繁に起こるだろう。保護者の方が偏差値が高い大学を出ている可能性が高いのだ。教員の不人気から来る教員不足が、教員の学力の低下という事につながるのではないかと思っていたが、懸念は顕著に進んでいる。
私の経験を話そう。校長をしているとき、学校の人事に関して教育委員会の人事課と話をする。相手は管理主事だ。雑談で、管理主事がこんなことを教えてくれた。「数Ⅲを高校で勉強していないのに、数学の教師になる者がいるのですよ。とんでもない時代になっています」と。びっくりである。数Ⅲは、高校数学の中でも最も難しい。理系進学には必須の科目である。それなのに、自身が高校で数Ⅲを学んでいないのだ。どうやって教えるのかと思う。
また、こんなこともあった。附属中学校で大学からの実習生を受け入れている時に、研究授業を見に行った。ちょうど歴史の授業で足利義満に注目した人物史をやっていた。義満の功績から中世史を学ぼうという授業である。その中で、学生が、南北朝の統一に触れ、「南北に天皇が分かれた南北朝時代は、数年続き・・・」と発言したのだ。「はぁ?」である。義満の業績として南北朝の統一は大きな業績である。それにもかかわらず、90年続いた南北朝時代を数年と教えるとはなんたることか。とんでもない話だ。因みに、私は数学の教師である。国立の教員養成系大学にしてこれである。偏差値50以下の私立大学の場合、2教科受験、3教科受験で合格する。受験科目に無い教科は、中学校レベルでとどまっているのである。これで、知識・技能を教えられるのだろうかと思う。
学校現場の崩壊が始まった。教員の待遇改善のために政府が行おうとしていることは、効果が薄いことははっきりしている。4%を10%にしようが「定額働かせ放題」の制度は継続される。記事も、次のように指摘している。
「そもそもお金云々ではなく、教員があたかも『何でも屋』のように扱われている現状を変えなければならない。現場の教員が思っているのは、『カネはいいから、時間(ゆとり)をくれ』に尽きる。教員は、教えることの専門職。この原点に立ち返り、役割革新を進めることが真の処遇改善というものだ。」
教職不人気で加速する『教員の学力低下』の深刻度
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