1月23日の読売新聞の教育欄に「教員『なり手不足』深刻化」という記事が掲載されていた。掲載されている2024年度の小中学校の教員採用倍率をみると、3.0倍を下回っているのが、政令指定都市も含めた自治体で、小学校75%、中学校20%弱である。採用倍率が3倍を切ると、教員の一定の質が確保できないと言われている中で、特に小学校教員のなり手不足が深刻化していることが浮かび上がった。
記事には、リードにこんな内容がある。
「今後は、教職に学生を引きつけられるような明確な教育理念を、各教委が打ち出せるかどうかがカギを握る」
ミスリードも甚だしい。何を寝ぼけたことを言っているのだ。なり手不足の主要な原因は、教員の過酷な労働実態にあるのだ。記事にも東京都内の公立中教員のコメントが掲載されていた。
「教育実習で長時間勤務の教員を見て、『この職場で働くのは厳しい』と民間企業に進んだ学生もいる。現場の負担が減らなければ、教員を志望する人は増えないのではないか」
まさにその通りだ。
教育委員会も採用時期を早めたりするなど、今できることの対策を打っているのが、いずれもなり手不足の解消には至っていない。当然だろう。学校現場がブラックなことは知れ渡ってしまい、民間よりも厳しい現場であることは周知の事実なのだから。さらに、民間企業なら残業代は支給されるが、給特法の関係で「定額働かせ放題」というのが学校現場である。ワークライフバランスを重視する若者に選ばれるはずがない。
記事の最後に東京学芸大学の岩田教授のコメントが掲載されていた。この人も寝ぼけたコメントをしている。
「厳しいと指摘されている労働環境は徐々に改善されてきた。」
確かに改善されてきたが、それは「徐々に」と言えるようなものではない。文科省をはじめとした行政の支援を受けられない中で、乾いたぞうきんを絞るような状況で労働環境を改善してきたのだ。こんな認識だから、
「各教委は今後、自分たちが目指す教育方針を前面に掲げ、民間企業と就職先を迷っている学生を引きつける努力が必要だ」
等と寝ぼけたコメントができるのだろう。このコメントを読んだ各教委の採用担当者はどんな気持ちになるだろうか。まるで、教育理念を示すことを怠ってきたかのような言い方に、憤りを感じる採用担当者も少なからずいるはずだ。
読売新聞もこの岩田教授も、もっと現場を知って、現場に学ばなければならない。このことを肝に銘じるべきだ。
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