2月10日の「授業時間の柔軟化」で書き足りなかったことを付け足そうと思う。まず、高校で50分授業を45分授業に変更しようという動きが大きくなったのは、週5日制の導入の時期である。それまで、週6日制の34時間という枠で授業をしていた。それが月1回の土曜休みが始まり、段階的に週5日制に移行していった。そうすると、週34時間の枠で各科目の単位を設定していたのが、週30時間では不可能に近くなったのだ。その現象は、標準単位以上の授業を行っている進学校ほど顕著になった。そこで、多くの学校では時間割の変革が試みられた。一番単純な改革は、週1回ないし2回の7時間目の設定である。そうすると、7時間目のある曜日は、生徒にとっては部活動の時間が短くなる、そして教師にとっては放課後の会議が設定できない、時間外勤務が増えるということが起こる。そして、もう一つの変革の方法が、45分授業×7時間の週35時間での時間割の編成である。午前4時間、午後3時間の授業になる。放課後の時間は、6時間の時よりも短くなるが、部活動ができないというほどではない。しかし、生徒の集中力が7時間目まで持つかどうかということも起こった。そして、足りない授業時間を授業日の増加ということで対応しなければならなくなる。だから、45分×7時間授業というのは、かなりの進学校でないと実施していない。大阪府で今もやっているなら、大阪府立天王寺高校が実施している。大阪府では北野高校と並んで、超有名進学校である。この学校をモデルに、週34時間、33時間、32時間と様々な改革が行われた。これ以外にも、進学校では、90分授業や100分授業などを導入しているが、いずれの場合もかなり変則的な時間割とならざるを得ない。その要因は、1単位の授業時間が50分と厳格に設定されているからである。果たして、今回の小中学校での柔軟化はどうなるのだろう。
さて、今回の小中学校での授業の柔軟化であるが、論点となるのは、果たして授業時間を短くして学力が向上するのかということに尽きる。保護者からすると、45分授業が40分に、50分授業が45分に短縮されて大丈夫かという疑問が自然と出てくるだろう。高校のように総授業時間数が確保されているわけではなく、各教科の科目の時間数が削られた分は、別の事に充てられるわけであるから。学力が向上するのかという点が大きな課題として浮かび上がってくる。そこで、重要になってくるのが、校長のリーダーシップであろう。浮いた時間を何に使うのか。この点を明確に打ち出すことが必要である。授業時間を短縮したために、全国学力学習状況調査の結果が下がったということになっては、保護者の反発も大きくなるだろうし、授業時間の短縮はすぐに挫折することが予想される。
では、校長にはどのようなリーダーシップが必要とされるか。
第一に、児童・生徒の学力に関する現状分析だろう。それもあらゆるデータを駆使して、学力の見える化をしなければならない。単に知識技能の観点だけではなく、思考力・判断力・表現力と言われる「見えにくい学力」、そして学びに向かう社会性も含めた学力も見える化しなければならない。これはなかなか困難な話だ。なぜ見える化が必要か。それは、保護者に対して説得感のある材料を示すためである。
第二に、現状分析から浮いた時間をどのように使用するかという政策化である。何をどのように使えば、最大限効果を発揮することができるかという、ストラテジーが必要になる。
そして、第三に、発信力である。きちんと保護者に理解してもらえるように、現状分析や方針、ストラテジーを説明しなければならない。紙切れ一枚の通知で済む話では到底ない。
さて、ここで問題にぶつかる。このようなことをできる校長は、全国でどれだけ存在するのだろう。高校は、各校での自立的運営、特色化がかなり進んでおり、自立的な学校経営が行われているケースが少なくない。ただ、義務教育には少ないように思える。市町村単位ということもあってか、「横並び意識」が強い。突出することが嫌われるようである。今後、どのように授業の柔軟化が活用されるのか(またはされないのか)、注目していきたい。
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