戦前、日本のターニングポイント:「ロシアの眼から見た日本」より

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 昨日のブログで、私は何の根拠もなく「日本のターニングポイントは、満州事変後に支那事変に突入するかしないかだ」と書いたが、この本を読んで、その時期がより鮮明になった。何の本かというと、亀山陽司著「ロシアの眼から見た日本」である。外務省に所属し在ロシア日本大使館などで勤務した経歴の持ち主である。この本については、すべてを読み終えてからコメントしたい。国際政治とは何かについて、非常に示唆に富んだ本であることは間違いない。

 この本で、戦前のロシア・ソ連と日本の関係について詳述しているのが、第二章・第三章である。その中で、日露戦争後の1924年~31年に外相を務めた幣原喜重郎について書かれた部分がある。幣原外相は、内政不干渉を原則として、対米英協調外交を展開した。軍部の批判や抵抗にも負けず、この路線を貫いた。ところが、国民からは「弱腰外交」として批判され、また政府内でも「無抵抗主義は、日本帝国の威信を傷つけるものである」と痛烈な批判をされている。そして、満州事変勃発後に、幣原外相は表舞台から姿を消す。ここが、大きなターニングポイントだと、この本を読んで認識を新たなにした。この幣原外相について、著者である亀山氏は次のように評している。今の私達にとっても、とても重要だと思ったのでここで紹介する。

「対中不干渉主義と米英との協調を骨子とする幣原外交は、そういう意味では国内世論の大勢の指示を受けていたわけではなかった。それでも日本が国際的孤立に陥ることを防ぎ、中国の領土保全というコンセンサスを守って中国との関係を改善することが日本の国益にかなっている、という分析と判断に基づき断固として政策を貫いたところが、幣原外相の立派なところだろう。国民世論や国民感情に流されてしまうのでは、政治、外交の指導者とは言えない。ただの無責任なポピュリズムでしかないのである」(p158~p159)

この本、中々勉強になる。多くの人が手に取ってほしいと思う。


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