慶應義塾高校野球部の優勝は、「探求学習」の成果?!


 第105回の全国高校野球選手権大会で慶応義塾高校が優勝した。どの新聞、テレビ番組も慶応義塾高校の選手が丸坊主でないことや彼らのモットーである「エンジョイ、ベースボール」を取り上げている。森林監督は、「練習ではすべてを教えず、『余白』を残した指導を心掛けている」らしい。大村主将は、「より高いレベルで野球を楽しもうという合言葉」とこの「エンジョイ、ベースボール」を理解しているらしい。皆さんは、この慶應義塾高校の優勝をどう捉えますか?私は、この野球部の取り組みに、今学校現場で積極的に取り組まれている「探求学習」の匂いをプンプン感じているのですが・・・。
 野球部と言えば、監督のリーダーシップという名のもとの厳しい指導が有名で、そこには行き過ぎた指導があったり、体罰があったり。そしてその雰囲気が、先輩後輩の厳しい上下関係に反映されたりと、とにかく「根性で鍛える」というイメージがある。練習メニューも自分たちで考えるのではなく、監督や先輩からの「上から言われたメニューをこなす」という雰囲気を感じる。どこまで自覚をもって練習に取り組んでいたか。NHKのインタビューでも元高校球児の人が、「自分たちの時代とは違うね、自分たちはとにかく言われたことをこなす毎日だったから」と答えていた。
 ところが、この慶應義塾高校野球部は、「更なる高みをめざすために、何が問題か」を考え、その解決のために「何が必要か」を探求し、協働して取り組んでいる。まさに「探求学習」のスタイルではないかと思う。自分たちで自分たちの課題に取り組むことこそ強くなる秘訣であることを、今回の優勝が証明したのではないかと思う。
 今、部活動の体罰根絶が言われている。慶應義塾高校の野球部のようなスタイルの部活動には、体罰が発生することはありえないだろう。部の監督やコーチのリーダーシップを重視するタイプのスポーツ、例えば今回の野球部以外にも、バレーボール、バスケットボール、水泳、文化系で言えば吹奏楽部などは、どのような活動が生徒を強くするのかを考えた方が良いだろう。
 私は、高校時代にラグビーをやっていたが、ラグビーは同じグラウンドに立つ選手であるキャプテンのリーダーシップを重視する。試合を見ていただいたらわかるが、監督は観客席にいる。ハーフタイムに指示やアドバイスをすることもあるが、試合中に指示を出すことはほとんどないスポーツだ。ラグビーのワールドカップで日本チームのキャプテンであったリーチ・マイケルを先頭に、肩に手を置いて入場するシーンが有名になったが、あのスタイルがラグビーの精神なのだ。他のスポーツとは、少し違う体質を持っている。

今回の慶應義塾高校の優勝を契機に、全国の部活動指導者がコーチングの在り方を学び、体罰根絶を実現してほしいと思う。


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