意外な判決

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 京都大学吉田寮の明け渡しを巡る判決が、2月16日に京都地裁で出された。ほぼ8割がた、学生の言い分が認められた判決である。私の予想では、学生側の敗訴であったので、意外な判決だと思った。なぜ、意外な判決かというと、大学側は「安全配慮義務が大学にある」と主張していた。吉田寮は老朽化しており、震度6の地震で倒壊の恐れがあると判定されている。このような寮に学生を住まわせ続けていれば、まさかの時に大学側の責任になるというものである。判決の前日にもニュースで取り上げられていたので、「なるほど、大学の言い分はもっともだよね」と思っていた。しかし、もう一度言うが、意外にも大学側が敗訴したのだ。

 京都地裁での判断は、
「寮は寮の自治会が運営することが大学側と自治会との間で確認されていて、寮生は自治運営されていることに意味を見いだして入寮しており、代替宿舎の提供をもって契約は終了できない」
「14人の寮生との間には在寮契約が認められ、大学の規程には、老朽化を理由に退去を求めることができるという定めが存在しない」
というものだ。契約は確かにそうなのだろうが、これでは大学側は安全配慮をしなくても良いのかという疑問が残る。これなら、大学の寮の在り方にも大きく影響するのではないだろうか。全国の大学には多くの寮が存在するが、少なくない影響が出そうだ。

 校長という仕事をしていると、生徒に対する安全配慮という問題に神経を使う。予期せぬと思っていた事故でも「予測可能かどうか」という点が焦点になる。予測可能と言われれば、安全配慮義務違反と言われるのだ。例えば、雷。遠くのほうで雷が鳴っていても、ある判決が出るまでは、「まあ、遠くのほうだから大丈夫か・・・」と判断して、屋外と部活動も継続していた。ところが、雷が生徒を直撃したことを巡る判決で、安全配慮義務違反と判断されたのだ。この判決以来、雷が鳴ったら、即座に屋外での活動を中止させるようになった。遠くのほうの雷鳴でも、どうなるかわからないからだ。

 退去を求められた学生側3人は、さっそく控訴をするらしい。大学側は、慎重に言葉を選んでいるが、控訴の可能性が高いと勝手に思っている。次は、大阪高裁で争われることになるが、果たして結果はどうなるのだろう。常識的には、大学側の安全配慮義務というのが普通の判断のように思うが。


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