思考力問う記述式問題

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 3月28日の読売新聞の教育欄、シリーズ「新学力 第2部 『変わる入試』」で高校入試のケースが掲載されていた。広島県の県立高校の入試問題が取り上げられている。2024年度入試には、「物流業界の2024年問題とデジタル技術」を考えさせる社会科の記述式問題が出題された。21年は、防災をテーマに、どんな情報をスマートフォン上のハザードマップに表示すればよいか考えさせる問題、23年は兵庫県名産の「播州そろばん」の生産の持続可能性の問題が出題されたという。とても、良問だと思う。現実社会に即した、すぐさま解答が無い問いであるがゆえに、思考力が問われる。

 さて、採点だ。このような解答の幅が非常に広い問題の採点は、さぞ苦労するだろうと思う。一字一句追っていると、膨大な時間がかかる。どのように採点をしているのかは、私は知らない。が、このような記述式問題ではルーブリックが役立つだろう。様々な観点がどの程度記述されているか、複数の目で採点すれば、自ずと採点基準はそろってくる。国語の作文や英語の英作文のように採点していると、いつまでたっても終わりが来ない。ルーブリックが大切だ。

 次に受験する側の受験生の視点に立ってみよう。広島の塾経営者は、こんなコメントをしている。「教科書で扱わないような最近の話題を取り上げ、自由に記述させる広島の入試問題は、戸惑う受験生が少なくない。解き方を繰り返し練習し、慣れることが大事だ」と。なんと、おバカなコメントか。このような時事問題とも言える入試問題には、次の事が必要だ。
①どれだけ、世の中の事に関心があるか、つまりニュース・新聞を読んでいるか。逆に言うと部活動漬け、ゲーム漬けの生徒は、いくら練習しても付け焼刃では歯が立たない。
②その上で、基礎知識を知った上で、世の中にどのような意見があるのかを知っておくことが重要だ。この点はとても参考になる。特に、社会がどのように解決しようと試みているのか、様々な事例を知ることが大事。特に、IT技術、AIの活用などは、トレンドとして知っておかなくてはならない。
③このような知識を仕入れたうえで、それでは自分はどのように解決するのかという探究的な姿勢を常に持つことである。仲間同士で常日頃から話題にすることも大事だろう。思考力とは、暗記で見につくものではない。まさに生徒の物事に向かう日々の姿勢が問われているわけだ。

高校入試ではないが、フランスで実施されているフランスバカロレアは、すべて記述式の入試である。特に哲学の問題などは、問題と白紙の答案を渡され、ひたすら記述するのである。フランスの高校生は、この入試に向けてひたすら哲学の勉強と論述の勉強をする。もっと言えば、小学校から論述の勉強をしている。やっと、日本でも思考力を問う問題が、論述形式で出題されるようになってきた。県教委の担当者の次の言葉が重要だ。

「これからの時代は、学んだ知識を活用し、問題の解決策を考える力が必要。入試問題の見直しが中学校の授業の変化につながっている手応えがある」

こんな入試問題がどんどん増えてほしいと思う。


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