小学校の英語教育


 興味深い記事を見つけた。以下の記事だ。

小学校段階で「英語格差」、「英語嫌い」が増え教員も指導困難に陥った根本原因 英語教育学の専門家が戦慄した調査結果の数々

という東洋経済の教育記事だ。記事のポイントは、
①小学校の英語が正式に教科になったことで、英語嫌いが増えている。
②中学入試に英語を課すことにより、「受験英語化」が進んでいる。
③英語が嫌いなまま中学校に入学してくるので、中学校での教える負荷が増している。
④塾で学ぶ子、学ばない子の学力格差が広がっていて、中学校では誰を焦点に教えて良いか悩む
というようなところだ。和歌山大学江利川春雄名誉教授の指摘だが、なるほどと実感させられる。

 教授によると、このような英語嫌いが増えたのには、児童・生徒への英語の負荷が強すぎるということらしい。例えば、
★小学校5・6年生で習う英単語は、600語~700語であること。
★中学校の3年間で1200語程度だった新出単語が1600〜1800語に増やされ、それに小学校の600〜700語が加算された。合計すると2200〜2500語にもなること
★難解な現在完了進行形や仮定法なども高校から下ろされ、英文も長く難しくなった。
というのである。これでは、英語嫌いが増えるのも当然だし、二極化も当然だろう。

 二極化と言えば、私が附属中の校長をしていた時に、英語の教員から相談を受けた。「先生、英語の授業は本当に難しい。誰に照準を当てて授業をしたらよいかわからない」というのである。数学の二極化は、言われて久しいが、英語もかと思った。そこで、英語の定期テストのヒストグラムを作成して検証してみた。数学以上に、見事なふたこぶラクダの分布になっており、ちょうど中間になる50点から60点当たりの人数が、極端に少なくなっていた。これでは、授業はやりにくい。真ん中に合わせれば、学力が上の生徒は退屈し、下の生徒はついてこれない。一番人数の少ないところに合わせているので、学習成果も低いのである。この相談を受けた先生の授業評価は、学校全体でも5本の指に入る先生だ。決して授業の進め方に問題があるわけではない。当時は、なぜこういうことが起こるのかまでは正直分からなかったが、この記事を読んで、「なるほど」と納得した。

 日本の英語教育は、どうも右往左往しているようだ。果たして小学校で英語を教科として教えることが良いことなのかどうか。教授は、教科ではなく外国語活動として負荷を減らすことが肝心だと提言する。その通りではないかと思う。

 最後に、この記事には群馬県の高校入試の学力分布が掲載されていた。大阪府はどうなのかと検索してみたが、どうも大阪府教育庁は公表していないようだ。公表するかどうかは別にして、この入試の成績を材料に、小中学校の英語教育の在り方を検証するのは、良い手法だと思う。


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