学校教育とデータ


 最近、民間の方とお話しする機会がありました。私が、学校経営において「エビデンスを示した上での学校改革を進めてきた」とコメントしたことについて、「学校教育とデータ、エビデンスってどんなものですか?どうも馴染まないように思うのですが・・・」と質問を受けました。そうなんですね、これが一般的な世間の認識なのでしょう。やはり学校教育とデータというのは、なかなか結び付かないのだと思います。
 しかしながら、近年はIRといって、Institutional Researchが教育界でも導入されています。このIRは大学からスタートしました。大学IRとは、学内に蓄積されている多数のデータを集積、分析し、そこから導き出される結果から、学内での意志決定や改善活動を立案・実行・検証するための支援を行う活動を指します。今では、徐々に高校の学校経営でもIRの観点が重要視されています。私が勤務していた大阪府では、平成11年度から「学校教育自己診断」という命名で学校関係者評価が導入されていました。学校関係者とは、生徒(児童)・保護者・教職員を指します。この結果は、学校のwebpageでの公開が義務つけられていますから、各学校の診断結果について閲覧することができます。
 問題は、ここからです。これだけではIRとは言えません。先ほどの大学IRの説明にも述べたように、大学経営の意思決定に役立てられなければならないのです。よって、この診断結果や入試状況、進路状況、模擬テストをはじめとする様々な学力学習状況調査などのデータを分析し、現在の学校経営状態を分析し、そしてどのような状況に位置づいているのかを明らかにする。そして、進むべき方向性、力点の置き方などを決めていかなければなりません。これができて初めてIRが導入できているといえるでしょう。この分析作業を行うのは、校長の仕事です。データの集計や集約は教頭先生や主幹教諭などにやっていただいても、分析をするのは校長の仕事だと思います。
 ところが、多くの学校でこの学校関係者評価は、データを集約して公表して終わりとなる傾向があります。これでは、データを取ることが自己目的化してしまい、「何のためのデータか?」となってしまいます。このデータ分析能力は、校長の学校経営能力の一つであり、今後ますます重要になると私は考えています。次回は、学校関係者評価について、もう少し詳しく述べたいと思います。


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