子離れですよ、東京・H子さん!


 9月8日、読売新聞の人生案内にこんな相談が寄せられていた。40代後半の主婦の方である。娘さんが大学受験に向けて浪人中なのだが、受験の重圧から「勉強したいが集中できない」と自分を責め、うつ病と診断され、高3の時の受験を断念したというのである。相談は「娘と笑顔で関われず、余計な言葉を言ってしまう自分が情けなくてつらいです。どうすれば前向きに娘と関われますか」という内容だ。
 これに対して、海原純子氏は、的確にアドバイスされている。さすが、心療内科医だと感心した。
「いまお嬢さんがうつになっているのは、一度立ち止まりその道がいいのか、と自分に問いかけているように思えてなりません」
「友達と話し、親の価値観から離れ、自分に必要なものを探している状態かもしれません」
「今一度お嬢さんを信じる、ということに心を向け、お嬢さんに関わる時間やエネルギーを、ご自分の生活、生き方に向けてはいかがでしょうか」
「追い詰められているのはお嬢さんよりもむしろあなたではないでしょうか」

とアドバイスされている。私もまったく同意見だ。娘さんは、大学受験までいわゆる「良い子」でいたのではないかと思う。H子さんは、「小学校から私立に通わせ、本人が望む環境を整え、何不自由なく、育ててきました」という文からも、お嬢さんは、「良い子」だったのだろうと想像できる。そして、明らかに、過保護だ。お嬢さんの反抗期と言われる時も、もしかしたら無かったのかもしれない。お嬢さんの「うつ状態」は、消極的な反抗期の現れなのかもしれない。だから、お嬢さんは、親に歯向かうことなく、必死に反抗し、親離れをしようと模索している状態なのだ。だから、海原先生も、「友達と話し、親の価値観から離れ、自分に必要なものを探している状態かもしれません」とアドバイスされている。

 だから、H子さんが必要なことは、お嬢さんに関わることではなく、子離れすることなのだ。海原先生が「さすが!」と思ったのは、「親離れ・子離れ」という言葉を一切使わずに、「子離れ」をアドバイスされていることだ。今の親世代に「子離れ」と言っても、想像できないのではないかと思う。周囲は、少子化で一人っ子家庭が多く、子離れを実践されている家庭を見ることが皆無だからだ。要は、もう「子離れ」のロールプレイを見ることが無いのである。だから、海原先生は、具体的に
「今一度お嬢さんを信じる、ということに心を向け、お嬢さんに関わる時間やエネルギーを、ご自分の生活、生き方に向けてはいかがでしょうか」
「追い詰められているのはお嬢さんよりもむしろあなたではないでしょうか」
「少しご自分をいたわり、ゆとりの時間をお作りになると、お嬢さんとの関係も改善するのではと思います」
とアドバイスされている。

 少子化が進む中で、「親離れ・子離れ」も死語になりつつあるのではないかと思う。このテーマを扱った朝ドラとか、トレンディドラマが出てくると、ちょっとは違うのかもしれない。「ブギウギ」の子育ては、如何にも過保護で過干渉だった。あれはダメだと思う。「虎に翼」の子育ては、寅子の娘が小さいころから大家族で育っているので、しっかりした子どもに育っていったように思う。そして、素晴らしい大人との出会いが彼女を成長させている。

もう、お嬢さんも親の手を離れ、外の世界で成長する時期に来ていると思いますよ、H子さん!


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