妹尾氏の提言

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妹尾氏が、保護者からのクレームを激減させるために、4月の入学式後で保護者向けに校長が話すべきことを提言された(下記にリンクあり)。内容は、
① 子どもの安全はもちろん、教職員の健康を守ることの意味
② ここまでは学校はできるが、これ以上はできないという線引き
③ お互いに率直に、オープンに話し合っていきたいこと
である。入学式というのは、ほとんどの保護者が出席されているので、校長として学校の経営方針を話すには絶好の場であることは確かだ。学校現場が疲弊している事実も含め、①及び②の話をする意味は理解できる。妹尾氏は、②の具体的な内容として、

「生徒さんの希望をなるべくかなえてあげたいとは思いますが、A先生もB先生もバレー部の顧問として雇用されているわけではなく、体育科や社会科の先生としてです。なので、当然、指導力に差はでてきます。部活動については、生徒は楽しみにしているし、子どもたちの成長に資することはよく理解していますが、正規の教育課程とは別の、+αの課外活動という位置づけなので、できる人ができる範囲でしか、指導はできません。親御さんにとってのPTA役員に似た性格のものになります。日本の中学校教員の時間外勤務時間は世界一という調査結果もあり、教員の過労死などのリスクも高くなっていますし、とくに土日は無理をさせるわけにはいきません。部活動の地域移行や地域展開といって、地域などに指導者や運営団体がいると違ってきますが、本校の実情ではすぐに地域移行できるものではありませんので、生徒にとっても、教員にとっても無理のない範囲での活動日数となりますこと、どうかご理解ください」

という内容を話すことを提言されている。だが、この内容を入学式直後に話せる校長はどこまでいるだろうか。かなり勇気のいる行為だ。というのも、入学式というのは、学校と保護者が正式に出会う初めての場である。保護者からすれば、どんな校長だろう、どんな担任の先生だろうと興味と不安でいっぱいだ。学校側も、これから3年間お付き合いをする保護者の方との出会いの場なのだ。そのときに、「学校はここまでできるが、それ以上の事はできません」という趣旨の話をできるだろうか。保護者の中には様々な方がいる。「なるほどな、学校がブラックと言われているからな。仕方ない」と思ってくれればよい。しかし、「なんや、この学校。こんなこともできないのか、サービスが悪い学校や。こんな状態なら、私立に行かせればよかった」と思う親もいるだろう。そう思われてしまえば、出会いからしてしんどい状況が生まれる。いくら③のようにオープンな話し合いの場を設定しても、文句を言いに来る立場の親と信頼関係を築こうとしている親では、まるで違うのだ。保護者は利害関係者、ステークホルダーであって、最初から協力者という立場ではない。関係を積み重ねていく中で、協力者になっていくのだ。

 さらに、校長が発言するというのも危うい。校長は学校の「ラスボス」である。学年主任や〇〇部長の発言なら、管理職がフォローできる。教頭の発言なら、校長がフォローできる。しかし、校長の発言は、校長以外に対応できないのだ。それほど、校長の言葉というのは重たい。

 妹尾氏の提言は、確かに重要だ。学校のブラック化を防ぐために、どこかで学校の立場を明確にしなければならない。その意味では理解できる。だが、その場が入学式ではないだろう。私ならどうするか。批判ばかりしていてはダメなので、私なりの方針を示したい。

 私なら、PTA総会に照準を合わせて話をする。それもいきなり話をするのではなく、まずは新旧のPTA会長と膝詰めでじっくり話をし、PTA会長の理解を得る。この段階で理解を得られなければ、前には進まない。次に、PTA役員会で話をし、会長からも助け船を出してもらう。そして、PTA実行委員会だ。ここで、じっくりと話をする。異論があれば丁寧に説明を行い、①のように教員の健康を維持することが、最終的にはより良い教育を実践することになると納得していただく。そして、PTA総会である。

 なぜ、このような方法をとるか。やはり校長(というより学校)の味方を増やすためである。まずPTA会長とじっくり話し、それから役員に話をしていけば、自然と話は広がる。実行委員会に話をすれば、もっと話は広がる。また、その過程で保護者の考えを聞くこともできる。そして理解を得られれば学校の応援団も増えるのだ。

妹尾氏も一度、校長という立場になられると良いと思う。妹尾氏なら素晴らしい教育と学校経営をされるだろう。是非、学ばせてほしいと思う。

保護者のクレームが激減する?新年度に「校長が保護者に伝えるべき」3つの話


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