妹尾氏が心配すること


 今回の給特法の改正、そして修正、衆院の通過に関連して、教育評論家の妹尾氏が、「東洋経済 Education×ICT」に寄稿された。かなりの長文で、氏がどれほど力を入れているかが理解できる。内容についても、ほぼ同意できる内容であり、今回の給特法改正・修正案についての解説・論点整理としても秀逸な内容である。氏の努力に敬意を表したいと思う。(一番下にリンクを貼りました)

 ところで、論点整理の4点目、
④ 教員の専門性と裁量を大切にしつつ、健康確保を進める法制度は何か
という事で、氏が懸念されている「マイクロマネジメント」という過剰に細かいところまで制限しようとするマネジメントについてである。氏は、この点について、

今でも、働き方改革の流れの中で、例えば学級通信を作る必要があるのか、全校でやめましょう、といった話がよく出る。管理職の関与、介入や全校で統一して業務の一部をやめることには、功罪がある。こうした動きが出るからこそ、業務負担軽減が進む、というポジティブな側面が1つある。一方で、そこまで細かく管理したり統一したりする必要はあるのか、そんな上意下達的な仕事の仕方ばかりでは面白くない、と感じる方もいるだろう。

とコメントしている。こんな話があるのだと、改めてびっくりしてしまう。働き方改革を実行して、教育の質を低下させては何をやっているのかと思ってしまうのだ。肝心なことは、教育の質を低下させずに、働き方改革を如何に進めるのかという点だ。この点が一番重要なことだと思う。そのために、管理職も教育委員会も、そして政府‐文科省も注力しなければならない。今回の給特法の改正で、教育委員会の働き方改革の計画立案が決定した。おそらく、教育委員会は各学校の実情を顧みずに、計画を立案する可能性が高い。その計画を立案するのは、学校現場の管理職だ。そうなると、「マイクロマネジメント」が発生する可能性が高くなり、現場教師の不満・ストレスが高まる。なぜか。やらなければならない仕事があるのに、「帰れ」と言われるからだ。現場教師とすれば、「残業せずに仕事が終えるように、授業時間を減らしてくれ」「ややこしい保護者対応は、他の専門家に仕事を振ってほしい」と思うだろう。だから、
★教員が授業と児童・生徒に注力できるように教員定数を増やすこと
★SC・SSW・SLを配置すること
が重要なのだ。

 さて、私立学校と国立系の附属学校では労基法が適応される。この法律の下で、学校現場ではどのようにタイムマネジメントが行われるのだろうか。私の経験では、学級通信を止めましょうとか、〇〇は無しにしましょうとか、というようなことは無かった。月の残業時間が45時間を上回らないように、それぞれがタイムマネジメントを実践していた。教頭に、本日の残業時間を申請し、教頭が月の残業時間を把握し、「残り◆◆時間ですよ」と教員に通知していた。知らされた教員は、個々で仕事の調整をしたというのが実態だ。

 本当に妹尾氏が指摘するようなことが起こるのなら、それは教育の質の低下を招いてしまい、それはそれで由々しき事態だと言えるだろう。教育の質が低下しないように、働き方改革を進めること、それが肝要だ。

先生たちの残業は減るのか?給特法改正が衆院通過、修正案でも積み残された5つの課題 国が踏み込んだ「呼びかけではなく義務付け」 | 東洋経済education×ICT


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