大阪府立高校再編


 8月26日、大阪府教育委員会は定員割れが続く門真西高校(門真市)と懐風館高校(羽曳野市)の2027年度募集を停止し、閉校する再編案を明らかにした。この決定で、府立高校が無い自治体が11市町村になることになる。

 ご存じの事と思うが、大阪府では3年連続定員割れをした府立高校は、廃校も含めた再編対象になる。現在3年連続して定員割れをした府立高校は、22校ある。これから少子化が進むとともに、私立高校の授業料無償化で益々府立高校の定員割れが進むだろう。

 懐風館高校の閉校により、11市町村で府立高校がゼロになるが、その市町村は、大阪府の郊外に位置している。吉村知事は、
「大阪府は都道府県の中でも狭く、交通網が整っており、全エリアが通学圏だ」と言っている。「地域に根ざした学校に通いたい生徒にも配慮する」と言いながらも、どうするのだと言いたい。
 例えば、府立高校が無い千早赤阪村・河南町・太子町は、JRも私鉄も通っていない。公共交通機関はバスだ。そのバスも心もとない状況だ。富田林市を中心に、千早赤阪村・河南町・太子町をエリアにしていた金剛バス会社は、採算が合わないという事で廃止となり、その後は近鉄バス・南海バスに引き継がれている。いつ廃止や縮小されるかわからない。大阪府といえども、通学困難生徒が出ないとも限らないのだ。

 市町村から高校が無くなるというのは、どういうことになるのだろう。大学院で教育政策を学んでいた時、北海道から学びに来ている院生がいた。そのころ、まだ大阪府の高校消失問題は大きくなかったが、北海道では市町村から高校が消えることは、自治体の存亡に関わるという事だった。だから、道立高校から市町村立に移管することさえ検討されているというのだ。今後、大阪府でも市町村に移管するという事が起こるのではないだろうか。
 
 例えば、私が住んでいる河内長野市は、和歌山県と接する大阪南部の自治体だ。大阪府で唯一消滅自治体に指定されている。市内には、長野高校と長野北高校の2校が設置されていた。すでに長野北高校は廃校になっている。残るは、長野高校1校だ。長野高校が廃校になれば、府立高校が市内から無くなることになる。果たして、そんな状況になって良いのだろうか。すでに2年連続長野高校は定員割れを起こしている。河内長野市の市長は、「稼ぐ自治体」をスローガンに精力的に改革を進めているが、果たして府立高校を無くして良いのか、議論があっても良いと思う。

 とにかく、私立高校授業料無償化で、私立高校は生き延びるけど、公立高校が無くなっていくというのが、今のトレンドになっている。大阪府は、その最先端を不名誉にも走っている。こんなことで、後期中等教育が大丈夫なのかと思う。もしかすると、日本の教育に取り返しのつかない汚点を残すかもしれない。


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