大阪府立高校での自死行為

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 5月16日に大阪府立高校の生徒が自死行為に至った件についての報告書が提出された。結論から言うと、顧問の言動が、生徒の自死行為の要因になった蓋然性は、否定できないというものだ。当該生徒が、部活の公式戦がある日に、検定試験を受けるために試合に出ることができないということを、当該顧問が知ったときの生徒とのやり取りが原因のようだ。

 報告書によると、当該生徒と当該顧問のやり取りは公式戦の二日前になされた。どのような発言があったか、途中からそばにいた生徒Aと生徒Bが録画している。当該顧問は、次のような発言をしている。以下は、録画されている部分である。

「そうやって言えるか、ああああもらってるのに出れないでって、なんのためのああああ ああああやねん、明日たぶんそのな、そのことがあるな。ああああああ やるやろ、もう僕いらないって言え、僕でないんで、いえるか もらうことが…ああああどんだけの喜びがあって… 何のためにやってんのよ それはもうあきらめつかんわ 嬉しくはなかったん前回出られへんかって、試合出たいっていう話してたやろ …で前の(生徒氏名)の時もフルで出て、で僕らの中ではもう邪魔にもなってないし入れてるねっていう話を先生らの中でもしたし…ていう話も出てたし、確かにそうですねって、で他の(本件部活動に所属する他生徒の名前1)にも聞いたし、(本件部活動に所属する他生徒の名前 2)にも聞いたし「(当該生徒の名前)どうやった?」って「ああ全然、その…頂点の二人そこの二人慣れてたし、全然大丈夫でしたよ」て3年も言ってくれてたし まあそういう感覚なんやな、も、残念やわ、まあまあもう、好きにして」(「ああああ」の部分は、報告書では黒で塗りつぶされている箇所)

読んでいても、よくわからない。かなり、生徒に迫っていることは分かるし、突き放していることもわかる。少なくとも、教師が生徒に発する言動ではないのは確かだろう。当該顧問はかなり興奮していたのかもしれない。公式戦、二日前に試合に出るメンバーが出ることを辞退するとなると、顧問もショックを受けるだろう。しかし、事情や生徒の考え、思いを聞くという事がなぜできなかったのかと思う。この点については、顧問の聞き取りが報告書についても明記されていない。部活動は自主的な活動であり、参加するかしないかも生徒の判断と述べているのみである。
 
 私は、この当該顧問が旧来からの部活動指導に囚われていたと思っている。昭和や平成前半の時代なら、部の公式戦にレギュラーとして出場が決まっているのに、検定試験のために出場しないとなると、生徒にどのように対応するか(この当該顧問のように対応するかどうか)は別にして、「何を考えているんだ、この生徒は!」と心の中で思うだろう。学校教育における部活動の持つ意味合いが強かった時代である。だから、部活動に対する強制力も強かった。
 しかしながら、平成の終わりから令和になって、部活動に対する考えが大きく変わっている。部活動が生徒の学校生活に大きな負担になっていることも含め、部活動に対する考えが180°転換されたのだ。だから、今回の件も、次のように言うべきだった。

「検定試験で公式戦に出ることができないのは分ったけど、もう少し出場メンバーを発表する前に行って欲しかったな。やはり、チームで参加するからね。そうすれば、みんなも理解してくれるし、私も対処の仕様があったと思う。次からはもっと早く教えてください」

と。そうすれば、生徒に過度なプレッシャーをかけることにはならなかっただろう。そばにいた生徒A・Bが共に、録画をしようと考えたということは、当該顧問の様子を「異様」と感じたからだろう。

 ただ、報告書には、自死行為を行った生徒に対する聞き取りが記載されていない。前後の様子から、この当該顧問の言動が自死行為に至ったという事が否定できないという、あいまいな表現になっている。当該生徒が、この当該顧問の言動により、異常なプレッシャーと自尊感情を傷つけられたと説明しているのなら、原因ははっきりすると思われる。

 最後に学校の対応である。報告書では、この事案に対する情報共有が不十分だと記されている。学校がまとめた報告書も、教頭と学年主任の聞き取りメモで校長が作成し、対応委員会でも議論がなされなかったという。再発を防ぐためにも、何が問題で、どうすれば良かったかは、共有すべきだろう。センシティブな問題であるため、全ての情報共有ができるわけではない。しかし、今後の教育活動に有益と思える部分は共有しなければならない。そうでなければ、「隠ぺいしている」と教職員からも思われてしまう。このような大きな事案が発生し、指導に問題があった場合はできる限りの情報共有が求められる。


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