1月22日NHKが、「大分県内の県立高校が2023年度に行った推薦入試で、特定の部活動を強化するため、有力な中学3年生に得点を一律に上乗せし、合格に有利な扱いをしていたことが大分県教育委員会への取材でわかりました。文部科学省は『不適切な運用だ』として改善を求めたということです。」と記事を掲載した。
不適切な入試が行われたのは、大分県内の県立高校が昨年度行った推薦入試である。入試は以下のように行われた。NHKによると、
「県教育委員会によりますと、高校では特定の部活動を強化するため、全国大会に出場した生徒など、有力な中学3年生を事前にリストアップし、中学校の校長を通じて、入学する意向があるか確認したということです。そして、受験した場合には、110点満点の試験で30点を「総合評価点」として一律で上乗せし、有利な扱いをしたとしています。この高校の推薦入試では、およそ40人の募集枠がありましたが、合格した生徒の9割ほどがリストアップされた生徒だったということです。」
何が問題か?
第一に、入試の要項が事前に公表されていないということである。大学入試でも高校での活動で、顕著な成績を修めた生徒には、全国大会レベルで〇点、地方大会レベルで◇点など、基準を明確にしている。生徒会活動についても、英検・漢検などの資格についても事前に公表することで、入試の公平・公正性を担保しているのだ。しかし、該当高校では、推薦入試の要項を公表していない。これでは、入試の公平・公正性が担保されていない。
第二に、高校側が事前にリストアップしている生徒を、中学校側に受験の意向があるか確認し、受験した生徒に30点の加点をしている点である。もし、同レベルの実績を残した生徒で、学校側がリストアップしていない生徒が受験した場合、30点の加点はされない。これで「公平・公正」と言えるのか。問題はとてつもなく大きい。
第三に、大分県教委が、不適切な入試を行った高校の校長を処分しなかったことだ。その理由として、
▽文部科学省が不適切だが違法ではないと判断したこと
▽加点して合格した生徒の点数から、その分の点数を引いても、全体の合否が変わらなかったこと
をあげているが、違法と判断される法がないだけで、入試の大原則である「公平・公正」に反しているし、たまたま加点した生徒を正当に評価しても合格していただけである。逆に、不合格となった生徒の中に、正当な評価をした時に合格となった生徒がいなかったのかという方が、重要な問題だ。もし、そういう生徒がいたならば、取り返しのつかないことになっている。大きな問題と言えるだろう。何故処分しなかったのか、このことにより大分県教委の認識が問われることになる。
更に、第4の問題として、高校のこのような推薦入試のあり方によって、中学校での部活動の勝利至上主義が蔓延るのである。世の中の動きは、部活動、特に中学校の部活動の勝利至上主義を見直そうとしている。しかし、公立高校側がこのような入試を実施することにより、勝利至上主義を求める土俵が無くならないのだ。高校のエゴ的な経営のために、10代の若者を犠牲にするのはやめてほしい。
調査によると、このような入試を行っていた高校は2校あるらしい。なぜ、このような「裏制度」を設けるに至ったか、いつから実施しているのか、問題を指摘する内部意見は無かったのか、有ったのならなぜその意見が封殺されてしまったのか、徹底的に大分県教委は調査を行い、膿を出すべきだろう。大分県教委に自浄能力が乏しいなら、知事又は文科省が第三者委員会を設置して調査を行うべきだ。
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