国際教員指導環境調査では、教員の働く環境の比較だけではなく、指導や授業に関する調査も行っている。例えば、「学級で頻繁に行う指導実践」については、以下の項目を調査している。
「複雑な課題を解く際に、その手順を各自で選択するよう児童/生徒に指示する」
「他の児童/生徒の主張に対して、質問や意見を言うよう児童/生徒を促す」
「児童/生徒を少人数のグループに分け、問題や課題に対する合同の解決法を出させる」「新しい学習内容と過去の学習内容がどのように関連しているか説明する」
「批判的に考える必要がある課題を与える」
「明らかな解決法が存在しない課題を提示する」
「新しい知識が役立つことを示すため、日常生活や仕事での問題を引き合いに出す」
「完成までに少なくとも一週間を必要とする課題を生徒に与える」
これらの事を「しばしば」又は「常に」行っていると回答した教員の割合が次のグラフである。

日本とOECD平均の差を明確にするために、小学校、中学校、それぞれの日本-OECD平均を計算したのが、次のグラフである。

日本がOECD平均よりも多く実践しているのは、小学校で、「他の児童/生徒の主張に対して、質問や意見を言うよう児童/生徒を促す」のみ、中学校では、この項目に加えて、「児童/生徒を少人数のグループに分け、問題や課題に対する合同の解決法を出させる」である。 現学習指導要領が始まってから、「主体的・対話的で深い学び」が推奨されており、その成果がこのような結果になっているのだが、統計的処理を行えば、統計学的に有意に差があるとは言えないだろうと思われる結果である。他の項目は、OECD平均に劣っている。特に「批判的に考える必要がある課題を与える」という項目では、圧倒的な差がある。
これは、「主体的・対話的で深い学び」における「深い学び」がどこまでできているのかという事だろう。グループワークや対話的学びはできているのだろうが、深い学びはまだまだできていないという事が、明確になっている。
元々、「主体的・対話的で深い学び」が推奨された段階から、「対話あって学び無し」などという批判があった。これを克服しようとしたのが、京都大学の松下佳代先生の「対話型論証モデル」である。ただ、日本ではまだまだ学校現場では浸透していないようだ。確かに、日本の教員の中でこの教授モデルをマスターしようと思えば時間がかかるし、労力もいる。働き方改革が中心テーマになっている学校現場で、この教授法が浸透するのは難しいのかもしれない。しかし、このデータからも見えるように、世界とは圧倒的な差があるのだ。
この点については、マスコミも取り上げないが、大きな日本の教育の課題であると思う。
=参考=
対話型論証ですすめる探究ワーク
https://www.d-argument.net/
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