国際教員指導環境調査2024-その1

, ,

 経済協力開発機構(OECD)は7日、加盟国などを対象とする2024年の「国際教員指導環境調査」(TALIS、タリス)の結果を公表した。何回かのシリーズでこの調査結果について、コメントをしたいと考えている。その理由は、マスコミが報じているような「日本の教員の労働時間は世界最長」というだけではなく、妹尾氏が指摘しているように日本の教育の課題についても、かなり有益なデータが示されているからだ。

 最初は、最長データからである。これから示すデータは、調査報告に示されたデータを基に、データを再編集したり、EXCELでグラフ化したものであることをご理解いただきたい。日本は、1週間の業務時間が小学校で52・1時間、中学校が55・1時間で、いずれも前回18年調査に続き、参加国中で最長だった。参加国平均と日本とを比較したのが次のグラフだ。

 また、この調査では、「直近の通常の一週間において、あなたは、この学校での以下の仕事に合計でおよそ何時間(1時間=60分換算)従事しましたか。」という質問をしている。その項目とは、
「指導(授業)」
「学校内外で、個人で行う授業の計画や準備」
「学校内での同僚との共同作業や話合い」
「児童/生徒の課題の採点や添削」
「児童/生徒に対する教育相談(例: 児童/生徒の監督指導、インターネットによるカウンセリング、進路指導、非行防止指導)」
「学校運営業務への参画」
「一般的な事務業務(教員として行う連絡事務、書類作成その他の事務業務を含む)」
「専門的な学習活動」
「保護者との連絡や連携」
「課外活動の指導(例: 放課後のスポーツ活動や文化活動)」
「その他の業務」
である。それぞれの時間を積み上げ式のグラフにしたのが、次のグラフだ。

そうすると、
日本小学校→53.4時間
OECD小学校平均→54.3時間
日本中学校→57時間
OECD中学校平均→52.3時間
となる。小学校では、OECDの合計時間平均の方が多くなる。中学校では、日本の合計時間の方が多くなるのだが、これは一体どういう事だろう?報告書にもコメントが無いので意味不明だ。

 次に、小学校、中学校それぞれで、「日本-OECD平均」を各仕事で掲載してみた。プラスの項目が日本の方がOECD平均に比べて時間が多いという事になる。それが次のグラフだ。そうすると、意外な面が見えてくる。

①授業時間は、日本の方が少ない
②生徒指導を含む教育相談は、日本の方が少ない
③保護者との連携や連絡は日本の方が少ない
というのである。教員の働き方改革では、
❶授業時数の多さ
❷多様な生徒への対応
❸保護者対応
が教員負担の3大要因のように言われてきたが、OECD比較ではこのことが浮かび上がってこなかった。
 一方、
①圧倒的に中学校の部活動の時間は、日本が多い。
②事務業務の時間は、日本が多い
③学校運営業務の時間は、日本が多い
ことがわかる。OECD平均との比較では、中学校の部活動及び事務業務の軽減によって教員が児童・生徒に専念できる体制の必要性がクローズアップされている。

 例えば、中学校で課外活動の時間を、日本からもOECDからも除くと、
日本→51.4時間
OECD平均→50.6時間
となり、一週間に費やす時間は、さほど変わらない。中学校の働き方改革は、部活動の地域展開が最大の課題であることがわかる。

公表されたデータを違う視点で集計すると、違う結果が見えてきたというのが今回のデータ分析である。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP