国際バカロレアへの道-その11

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 「国際バカロレアへの道」も今回を最後にしたい。前回、概念教育への取り組みが「主体的・対話的で深い学び」を実践する上での重要な点であると述べた。概念教育が「深い学び」に繋がるからである。この最終回では、「学際的な学び」について述べたい。「学際的な学び」とは、複数の教科による教科の枠を超えた学びを指す。附属中では、探究的な学習に力を入れていたので、この「学際的な学び」も得意とするところだろうと考えていたが、やはり国際バカロレアの壁は高いと実感した。
 現行の学習指導要領も「教科横断的な学び」を推奨している。私が赴任した1年目に大学からの要請で家庭科の骨粗しょう症に関して3つの教科と連携して取り組んだ。家庭科・数学科・保健体育科である。食物・データ分析・健康という立場で、それぞれの授業で「骨粗しょう症」を取り上げた。私も初めての試みだったので、この取り組みがどうなるのかと注視した。その結果、私が得た感想は、「どうも、この授業内容は『教科(科目)の活用』で、教科横断的な学びになっているのか」と少し頭に「?」が浮かんだのだ。取り組んだ先生方には申し訳ないが・・・。
 国際バカロレアの「学際的な学び」を学ぶ中で、複数の教科を超えて学習するということが、やっと「なるほど!」と思えた。要は、概念教育がベースになっていなければならないということなのだ。つまり、2つないし3つの教科が共通で同一の概念を目標に、各教科の特性を活かしつつ授業を展開するということである。「活用」とは大違いである。かなり深い内容になるのだ。概念教育の取り組みの次には、この「学際的な取り組み」を実践しようと先生方と話し合っていた中で、突如私の取り組みは中断を余儀なくされた。残念でならない。

 さて、国際バカロレアの認定校に向けて取り組んだ2年間(実質1年半)であったが、始まった当初、私も含めて誰も国際バカロレア認定校での経験者はいなかった。国際バカロレア素人集団でのスタートだった。先生方と文献を読み、先進校にFWを行い、中心的に活躍されている方から研修を受ける中での手探りの実践だった。それでも生徒たちや保護者の方々には国際バカロレアの精神が浸透していった。特に、「10の学習者像」をベースにどんな体育祭を創り上げていくのかという取り組みは、生徒会を巻き込み、「国際バカロレアってナニ?」ということが生徒たちに浸透していったと考えている。この2年間の取り組みは、長い教師生活の中でも「一番充実した時」だったと思っている。今後、附属中の国際バカロレアの取り組みがどのように展開するのか、おそらく遅滞・中断・放棄などが予想されるが、先生方と創り上げた「附属中の10の学習者像」が生きている限り、国際バカロレアの精神は消えないと思いたい。
 
 この取り組みに賛同し、熱心に取り組んでいただいた先生方、そして国際バカロレアの精神を身につけていこうと真面目に取り組んでくれた生徒達、理解を示し暖かく見守ってくださった保護者の皆様、そして附属中の取り組みに協力いただいた国際バカロレア先進校の皆様に感謝を伝えたいと思う。ありがとうございました!


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