国際バカロレアへの道ーその9


 「国際バカロレアへの道ーその8」の投稿からずいぶん時間が経ってしまったが、その9を投稿したい。前回までは、校長としての国際バカロレア(以下、IBとする)の研修や、学校の教育目標の改定の取り組みについて述べてきた。今回は、そもそもIBとは、どういう教育カリキュラムなのかということを紹介し、何から取り組もうとしたのかを述べたい。
 
 IBの教育プログラムは、以下の内容である。

IBの教育プログラムIBの教育の内容対応する日本の学修指導要領
①探究を基盤とした指導児童生徒がそれぞれ独自に情報を入手し、独自の理解を構築することが重視されています。主体的な学び 生きる力 総合的な学習の時間
②概念理解に重点を置いた指導各教科における理解を深め、児童生徒がつながりを見出し新しい文脈へと学びを転移させることを助けるために、概念の探究が行われます深い学び
③地域的な文脈とグローバルな文脈において展開される指導指導には実際の文脈と例を用い、児童生徒は自分の経験や自分の周りの世界と関連づけて新しい情報を処理することが奨励されています学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力
④効果的なチームワークと協働を重視する指導児童生徒間でのチームワークと協働を促すだけでなく、教師と生徒間の協働関係もこれに含みます。対話的な学び、協同的な学び
⑤学習への障壁を取り除くデザイン指導は包括的で、多様性に価値を置きます。児童生徒のアイデンティティーを肯定し、すべての児童生徒が自身の適切な個人目標を設定し、それを追求するため、学習機会を創出することを目指します。インクルーシブ教育 個別最適化教育
⑥評価を取り入れた指導 評価は学習成果の測定だけでなく、学習の支援においても重要な役割を果たします。効果的なフィードバックを児童生徒に提供するということも、重要な指導方法のひとつとして認識されています指導と評価の一体性

 IBの教育プログラムに現行の日本の学習指導要領を対応させると、その内容が非常に似通っていることがわかる。IBで定義されている用語と学習指導要領の用語の差はあるが、教育プログラムの中身を検討すると、ほぼ同じことをめざしていることが見えてくるのだ。あえて、IBと学習指導要領の違いに言及すれば、IBの方がより「シャープに」目標を設定していると言えるだろう。その違いが、一番鮮明に出てくるのが、IBの概念教育と学習指導要領の深い学びである。私たちは、この「深い学び」の答えを、IBに求めることにした。
 現在の学習指導要領で求められている「主体的・対話的で深い学び」ーいわゆるアクティブラーニングで一番困難と思われるのが、「深い学び」である。アクティブラーニングをグループ学習やプレゼンテーションと狭く理解してしまうと、この「深い学び」に中々結びついていかない。そして、授業中の時間ばかリが「主体的・対話的学び」に消費されていくのである。これが、「主体的・対話的で深い学び」の最大の誤解と壁になって、この教育手法が広がっていかないのである。特に大学受験をめざす進学校と言われる高校で、未だに講義型の授業に拘っている教師が多い。実際は、「主体的・対話的で深い学び」を実践している高校の方が、進学実績は伸びているのにも関わらずである。
 この状況を打破すべく、京都大学の松下佳代氏は、「ディープ・アクティブラーニング」を提唱している。氏の主張の中核は、「本質的問い」と「永続的理解」にある。詳しくは、氏の著書を読むことをお勧めする。この「本質的問い」と「永続的理解」をより鮮明に目的化したのが、IBの概念教育である。次回は、概念教育について述べてみたい。

ディープ・アクティブラーニング(松下 佳代・京都大学高等教育研究開発推進センター)


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP