国際バカロレアへの道ーその7

,

 令和3年の11月に関心校に必須条件である管理職研修を終えて、その後に取り組んだのが年度末までに学校の教育目標とめざす子ども像を国際バカロレアの理念に位置付けることが一つ。もう一つが国際バカロレアコーディネーター(以下IBコーディネーターとする)を学校組織に位置付けることである。今回は、教育目標について書いてみたい。
 まず、旧来の附属中学校の学校教育目標は、以下のようになっていた。

人生をたくましく豊かに生き抜くために、考え、鍛え、行動する人間の育成。物事を多角的に理解し、新たな価値を『共創』できる子どもの育成

赴任した当初は、なかなか素晴らしい教育目標で、附属中の生徒たちをみると、確かに「考え、鍛え、行動し、物事を多角的に理解する努力をしている」と思った。しかしながら、世界的に見ても少し物足りなさを感じたのである。一つは、OECD2030の流れが組み込まれているか。もう一つは、SDGsの理念が組み込まれているかである。SDGsは「2030年まで持続可能な社会をめざす」ということで、やっと日本の社会にも位置づいてきたが(とはいっても、今の職場ではSDGsバッジを見てもいまだに「?」という若い教師がいるが・・・)、OECD2030の教育理念はどこまで理解されているだろうかと思っていた。国立行政法人の附属学校であるならば、最先端の教育をめざすべきで、まずは教育理念、教育目標からきちんと組み入れるべきだと思っていた。
 OECD2030の理念とは何か?その中心的概念は、「well-beingをめざすagency(共同agency)」である。OECDによるとagencyとは、

「エージェンシーは,社会参画を通じて人々や物事,環境が より良いものとなるように影響を与えるという責任感を持っていることを含意する」

と定義されており、この概念は、日本の学習指導要領に記載されている「主体性」以上に広く深く意味づけられている。さらに、国際バカロレアの理念である「平和な世界を築くことに貢献する人間」を考え、新しい教育目標を以下のように定めた。

平和で人間らしさが追求できるより良い社会の実現のために、物事を多角的に理解し、自分で目標を設定し、振り返り、責任をもって行動することで、社会の変化と持続可能性をもたらす新しい価値を「共創」できる子どもの育成をめざす。

どの文言が、どの理念を取り入れているかわかると思うが、一応解説しておくと以下のようになる。

平和で人間らしさが追求できるより良い社会の実現のために ・・・国際バカロレア
物事を多角的に理解し                  ・・・附属中
自分で目標を設定し、振り返り、責任をもって行動することで・・・OECD2030(agency)
社会の変化と持続可能性をもたらす            ・・・SDGs
新しい価値を「共創」できる子どもの育成をめざす     ・・・附属中

この教育目標を策定した時、少なくとも2030年、もしかすると2050年ごろまでは意味を持つ教育目標ではないかと考えた。先生方に提示し、議論をしていただいた時も、「これはたたき台だから、できる限り、揉んでたたいてくれ」とお願いした。その結果、「多角的」の後に「多面的」という言葉を追加することで承認された。
 因みに、OECD2030については、東京学芸大とその付属学校における研究が最先端を走っているように感じる。この教育目標を策定するにあたり、ずいぶんと東京学芸大学の研究を参考にさせていただいた。兵庫教育大学は、あまりOECD2030には関心が薄いようで、聞こえてくるのはSTEAMの声が大半だった記憶がある。
 次回は、子ども像について話をしたい。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP