国際バカロレアについて・・・その3


 前回の「その2」で兵庫教育大学附属中学校に赴任して、次の4点に驚いたと書いた。
        一つ目・・・附属中の教師のレベルの高さ
        二つ目・・・探求学習に熱心なこと
        三つ目・・・定員割れの深刻さ
        四つ目・・・大学のDX化の遅れ
である。国際バカロレアに関することで言えば、上から3つが関連する。今回は、どこまで書けるかわからないが、私に国際バカロレア路線に突き動かした要因について書いてみようと思う。
 一つ目の「附属中の教師のレベルの高さ」である。これには驚かされた。何に驚かされたかというと、教師として最も重要な教育に熱し、子どもに真面目であるということだ。当たり前のことではないかと思うかもしれないが、長年大阪の高校に勤めていると「同じ教師という職業でもこれだけ違うのか」と思う。私が高校で勤めていた時、周囲の教師と何かがずれるのである。「生徒のためならこうするだろ・・・」というときに、周囲の教師はあまりやらない。そういうことが度々あった。「この人たちは、本当に教師になりたかったのだろうか?」と思うこともあった。だから、教育問題を中心とする研修などについても熱心ではない。研修と言えば、できる限りさぼろうとするのである。今回の学習指導要領が明治以来のコペルニクス的転換になり、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力」という3つの学力観に大きく変わる、先生方の学習評価に関して大きく変わるので、研修や「校長通信」先生方に学ぶ機会を提供した。だいたい高校の教師は、テストを重視する。テスト点:平常点=8:2を基準に点数をつける。進学校は、9:1である。教育困難校は7:3、超困難校は6:4と日頃の日常的な生徒の頑張りを評価するが、基本は「知識・技能」をテストで、レポートやプリント、出席状況を平常点でつけるのである。この平常点は、一体3つの学力観のいったい何に該当するのか。そして、思考力・表現力・判断力という学力をどのように判定するのか。考えることは山ほどあるので、私は大阪にいるときにできる限り先生方に勉強してもらおうとした。ところが、食いつきが誠に悪い。「所詮一過性のモノだろう」と高を括っている。そして、骨抜きにしようという姿勢が見え見えなのである。そんな教師を相手にしていたので、附属中に赴任した時には、本当に嬉しかった。「やっと、まともに教育の話ができる!」と思った。それに、子どもに対して本当に真面目だ。私が出会った中学校の教師は、彼らが最初で最後なので、中学校の教師だからこのような高いレベルなのか、それともやはり附属中に来るほどの先生だからなのかはわからないが、とにかく子どもに対して、そして教育に対して本当に真面目だった。
 特に、生徒指導主事でベテランのY先生、本当に真面目に謙虚に仕事をされる教務のM先生、生徒の成長を本当に願い、とてもコミュニケーション能力が高いK先生、趣味が探求学習、一番好きな教科は「総合的な学習の時間」というF先生、何事にも真面目で研究熱心、そして生徒を成長させるためにはとことん関わるW先生、これは天性のものかと思わせるほど生徒の気持ちを掴むのがうまいT先生。クレーム的な保護者ともうまく信頼関係を築け、かつレベルの高い授業をするS先生。挙げればきりがない程、素晴らしい先生がたくさんいる学校だった。この先生たちと一緒だと、私がやろうと思ってできなかった教育を実現できるのではないかと思える教師集団だった。
 彼らと出会ったことは、本当に幸せだった。もっと紹介したいこともあるが、今回はここまでにしておこうと思う。次回は、探求学習について書く予定である。
 


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