問題提起は、もっともだ!

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 6月10日の教育新聞デジタル版によると、「6月9日に現職の小中学校の校長5人が、オンラインで共同記者会見した。校長らは教師の処遇改善に向けた同改正案に一定の理解を示しつつも、『管理職に重い負担がかかり、学校に丸投げの状態になるのではないか』『チーム学校が進む中で、学級担任への特別手当支給はチーム分断を生まないか危惧している』などと相次いで同法案の問題点を指摘し、人手不足解消に向けた定数増こそ必要だなどと訴えた。」とある。一方、給特法の改正法案は、10日に参議院文教委員会を賛成多数で採決され、11日には本会議に上程され、可決された。原案からかなり修正がなされたが、根本的な「定額働かせ放題」のシステムは維持されたままだ。

 今回の法案成立で、都道府県教育委員会が、教員の働き方改革の計画を策定することになる。東北大学の青木教授などはこの点を評価しているが、私は、評価しない。都道府県教育委員会は、数値目標を設定はするだろうが、果たしてその数値目標が達成される労働条件を整備するだろうか。私の経験からは、財政的な裏付けが乏しい教育行政で、そのような整備が行われるとは思えないのだ。今回の勇気ある校長たちの指摘の通り、「学校現場に丸投げ」となるのが落ちのように思う。現場で苦しむのは校長であり教頭である。これでは、益々管理職のなり手がいなくなるだろう。教員も不足している、管理職も不足しているでは、本当に学校は機能不全に陥る。

 北海道の校長は次のように指摘している。
「現場は未曽有の人手不足であり、何より現場の声で大きいのは授業時数を減らすこと。時間外勤務時間を30時間程度に削減する目標を掲げているが、授業時数が減らなければ子供たちに向き合う時間は作り出せない。定数増でなく、例えば加配で終わるなら、本当に一時しのぎの施策かと思う」

全くその通りだ。
更に、担任手当についても疑問を呈する意見があった。義務教育では、あえて実力がある教員を副担任として配置し、全体のサポートをしてもらうこともあるという。そうなれば、担任には手当がつくが、全体を見る教員には手当がつかないという事になる。ここに不平等感が起きるというのだ。なるほどと思った。私の経験では、やはり担任と副担任では、仕事量に差が生じていると思ったので、「担任手当も良いか」と思ったが、どうも一律にそうではないようだ。

校長5人による勇気ある問題提起はもっともな内容だ。しかし、もう11日には法案が可決してしまった。ちょっと声をあげるには遅かったように思う。ただ、この声を無駄にしていけない。全国校長会は、今回の給特法の改正についてきちんと評価を行い、次の改正に向けて動き出さなければならないと思う。


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