危機迫るアメリカ大統領選


 トランプ氏への襲撃事件の後、トランプ氏が何を語るか、共和党大会を注目していた。襲撃事件の後、共和党大統領候補就任演説の原稿を、トランプ氏は全面的に書き換えたらしい。というより、スタッフが書き換えたのだろう。「国民の団結」を呼びかけることが基調になっていた。しかし、原稿に無いアドリブでの発言は、相変わらずだ。「魔女狩り」「チャイナウイルス」という言葉を使い、ナンシー・ぺロス氏のことを「クレイジー」と表現した。これが、彼の本心であり、本性だろう。そんなトランプ氏に「アメリカの大統領」を担う資質があるのかと、良識ある人間ならわかることだ。だが、トランプ氏を支持する白人労働者は、冷静な判断ができないでいる。今回の党大会で、共和党は「トランプ党」に変質してしまった。
 一方、民主党バイデンは、高齢、健康不安を理由に、大統領選撤退を迫られている。新型コロナウイルスにり患して療養するバイデン氏と、銃撃されながらも高く拳を突き上げるトランプ氏。どちらが、力強いかは論じるまでもない。早急に、民主党はバイデン氏に代わる大統領候補を選出し、選挙戦略を再構築しなければならない。
 
 それにしても、アメリカは危機に瀕している。文芸春秋8月号にバーバラ・ウォルター教授の「米国で南北戦争が再び起こる日」というインタビュー記事が掲載された。教授は「アメリカは内戦に向かうのか」という著書で連邦議会襲撃事件を予言した学者として注目を浴びている。この本を読んでみようと思う。
 インタビュー記事で教授は、こんなことを語っている。シカゴ大学のロバート・ペイプ氏の連邦議会襲撃事件の分析を紹介し、

(ペイプ教授は)「議事堂を襲撃したり、民主制度を壊そうとする人々は、犯罪者やゴロツキで、無知で貧しく、教育を受けていない人々だ」という誤解を正してくれる。ペイプ教授によると、彼らの共通点は「白人」で、ほとんど男性であること。暴徒たちは「教養のある中流階級」であり、ある者は非常に裕福で、ある者は大学院の学位を持ち、ある者はプライベートジェットで乗り込んできて、ある者は法執行機関で働いていた。(中略)白昼堂々と議事堂まで歩いていく自分たちの姿をスマホで動画撮影し、自分たちが悪いことをしているとは微塵も考えていなかった。

と語っている。そして、「内戦は、突然起こる」と予言している。これは、教授が様々な内戦の事例を研究した上での結論なのだ。今回のトランプ氏襲撃事件も突然起こった。もし、トランプ氏の命が奪われるようなことになれば、内戦にまで発展してしまう可能性が十分に有ったのではないかと思う。

11月までに何が起こるか。そして、選挙結果を受けて何が起こるか。世界情勢に影響を与える大統領選だけに、その影響は計り知れない。


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