カスハラ対策の続きである。ケーススタディとして、文の風東京法律事務所の弁護士、岩崎氏が、「返却予定だった生徒Aの図工作品を担任教員が紛失してしまった(学校に100%落ち度がある)」という事例で、5つの仮想事例を想定した設問を設定し、その対応についてどのようにすべきかを提示している。とても、勇気づけられる内容だ。
5つの内容とは、次の内容だ。
(1)担任の変更を要求する
(2)担任教員の謝罪文の作成を要求する
(3)夜間の面談を要求する
(4)賠償要求として100万円を請求する
(5)学校の対応に不満を募らせ、大きな怒鳴り声や担任教員への暴言・侮蔑発言、長時間にわたる面談要求、「ネットに書くぞ!」という威圧的言動、土下座を要求する
(5)の場合は、明確にカスハラで岩崎氏もすぐさま教育委員会・弁護士と連絡することを勧めており、場合によっては警察への連絡もありうるとしている。よくあるケースとしては、(1)~(4)だ。(2)の謝罪文を出せという事に対して、岩崎氏は、
「『謝罪』と『謝罪文を書くこと』とは別行為で、重大な落ち度がない限り謝罪文の作成は不要。」「個人で書くものではなく、作成名義人はあくまでも学校で、」「内容・文面については学校の判断で作成」という。言われてみれば当たり前のことだが、このような要求をされたときに、性善説に立つ教師という人種は、パニックを起こし、相手の言いなりになりがちだ。
(4)の損害賠償請求についても過去の判例を示すことで、「慰謝料としては、各1万円とするのが相当である」と示しており、「100万円は法的義務から大きく乖離する過大請求」としており、保護者に対して算定根拠を問い合わせること、100万円という請求には応じられないことを説明することとしている。
このように、弁護士から道筋を示してもらえると、カスハラに遭遇しても慌てることなく、落ち着いて対応できる。校長・教頭と言っても、その経歴は教員。日常的に法律云々という世界で人生を歩んでいない。だから、弁護士のアドバイスというのは、本当に心強いのだ。
(1)~(5)に関して、いずれも保護者が納得しない場合は、教育委員会との連携、弁護士との連携が必要であることを岩崎氏は示唆する。東京都の調査で5人に1人が保護者のカスハラを経験している現状では、スクールロイヤーは益々重要だろう。
コメントを残す