夏の甲子園広島代表の広陵高校が出場を辞退した。10日に校長が記者会見を開いて明らかにした。校長は、SNSでの誹謗中傷に関して、「生徒、教職員らの人命を守ることが最優先。辞退に踏み切ることを決意した」と述べ、世間を騒がせている事案について新たな事実が判明したわけではないという。
この問題の最大の問題は、1月の暴力事件発生から被害生徒が転校を余儀なくされた事案を学校が、「いじめ」事案として、それも「いじめ重大事案」として取り上げず、放置していたことである。この時点で、いじめ及び暴力事案について、第三者委員会を立ち上げ、事案に対する調査を行っていたならば、生徒間の個人的トラブルなのか、それとも野球部が組織的に関与していたのかも判明していただろう。その調査をせず、高野連に報告を行い、高野連も「厳重注意」としたところからボタンの掛け違いが起こる。
そして、新たに監督・コーチなどの暴言・暴力もSNSで流布される中で、今回の出場辞退が起こったのだ。広陵高校の校長は、「新たな事実が判明したわけではない」としている。それならば、辞退する理由は何かと言えば、校長は次のように記者会見で答えている。
「先の1件目の件、それによるSNSで大きな反響、さらには(調査)結果の出ていない件について、いろんな誹謗中傷が出て、大会運営に大きな支障をきたしている。本校も甲子園を目指して頑張ってきた学校でありながら、高校野球の名誉、信頼を大きくなくすことになる」
「そして、本校の生徒が登下校で誹謗中傷を受けたり、追いかけられたり、寮の爆破予告(のネット投稿)があったりするということも、SNS上で騒がれている。校長として生徒、教職員、地域の方々の人命を守ることが最優先だということを踏まえ、辞退に踏み切ることを決意した」
このような理由であれば、結局はSNSによる誹謗中傷に屈したことにならないか。辞退をするということは、調査結果も出ていないうちから、SNSの内容を事実上認めたということにならないか。そして、野球部の監督・コーチの責任、野球部の組織的な関与ということを認めたことにならないか。少なくとも、野球部の多数の部員の関与、そして監督・コーチによる暴言・暴力をしっかりと確認してからの結論でも良かったのではないか。「高校野球の名誉、信頼」を言う前に被害に遭った生徒の救済だろう。
校長として言うべきことは、
①SNSで語られていることも含め、事実関係を速やかに(次回2回戦までに)調査する。
②もし、少しでも野球部の組織的な関与が明らかになれば、即刻全国大会を辞退する。
③よって、現在行われている本校への誹謗中傷、在校生への攻撃などは厳に慎んでほしい。
④寮の爆破予告については、警察にも被害届を出す。
ということではないか。この記者会見でも、
――中井監督やコーチからの暴力や暴言はなかったのか。
という問いに対して、
「(調査して)確認したが、そういったことは一切ない」
と答えている。それならば、結局は選手を犠牲にして、SNSに屈したことにならないだろうか。
最後に、国民も目覚めてほしい。今まで高野連は、厳しく学生憲章を実施すべく、野球部内の不祥事については、連帯責任を強いて厳罰に処してきた。そして、高校野球、甲子園という独特の文化を国民に植え付けてきた。国民も高校野球の精神主義とその純真性を是としてきた。今回の広陵高校の件については、初期対応を誤った学校、何回も言うようだが、いじめ重大事案として対応してこなかった学校に最大の原因がある。しかし、事実も明確にならない段階で、SNSの内容を信じて、拡散し、誹謗中傷し、学校を脅迫し、在校生に危害が及ぶ恐れがあるというような危険性が指摘される状況は、あまりにもおかしい。この事案が、高校野球の問題ではなく、第一義的にはいじめ重大事案の問題であり、その対処を怠った学校側にあることをもう一度冷静に考えるべきだ。野球部の出場辞退は、監督・コーチに暴言・暴力の確認、部員の暴力への組織的関与が明確になってからだ。
多くの国民は、高野連の精神論に毒され過ぎている!
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