9月14日読売新聞に、旭川中2自殺について再調査委員会から最終報告書が公表されたという記事が掲載されていた。ご存じのように、この事案は、当初設置された第三者委員会が「いじめと自殺の因果関係は不明」としたため、遺族側が強い不満を示し、再調査委員会が設置されたのだ。この事案は、いじめの重大事案に関する調査を行う第三者委員会の公平性・公正性に疑義をもたらす、つまり学校・教育委員会側や加害者側に寄っているのではないかという指摘をもたらすことになった事案の一つである。昨日、月刊誌「世界」10月号を購入した。別の寄稿文を読むために(別の日に意見を述べたい)購入したのだが、奇しくもその月刊誌に再調査委員会の委員で精神科医である斎藤氏が「旭川いじめ死と『いじめ後遺症』」と題した記事を寄稿していた。読んでみて、今までの疑問が氷解した。
まず、第三者委員会が「いじめと自殺の因果関係は不明」とした理由を、氏は次のように述べている。
「いじめ被害が決定的となったのが2019年6月であり、自殺を決行したのがおよそ20カ月後の2021年2月だったのは事実である。直接の因果関係を想定するには間隔が空きすぎているという見解も、一概には退けられない」
としている。しかし、氏は「ここには重大な誤解がある」と指摘する。氏は、
「いじめから心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症して自殺に至るという経緯を想定するなら、この時間差はむしろ自然なものとも考えられるのである」
と指摘する。詳しくは、この寄稿文を読んでほしいと思う。斎藤氏の指摘は、極めて重要であり、教育現場に関わる者は必ず理解しておかなければならないことではないか。ポイントは二つ
◎いじめとPTSDの因果関係
◎いじめの発達障害における影響
である。もう一度言うが、是非教育関係者に読んでほしい。
また、斎藤氏はいじめが認定されて第一になされるべきことを被害者・加害者別に示唆されている。ここにもとても重要なことが示されている。被害者を「避難させる」という理由で、クラス替えや転校させる場合があるが、氏は「クラス替えや転校をすすめるなどの負担を負わせることはきわめて侵襲的な対応であり、厳に慎むべきである」と指摘している。極めて重要な指摘だ。
最後に、寄稿文を読んで思ったことだが、いじめに関する学術的研究、特に心理学的研究においては、まだまだ日本は遅れているということだ。斎藤氏も海外の研究成果を紹介されている。教育実践的研究はあるのだろうが、心理学的研究が遅れているために、今回の第三者委員会のような誤解を生んでしまうのではないかと感じた。
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