再考デジタル教育-下

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  読売新聞に12月4日から3日連続で「再考 デジタル教育」が掲載された。3回目の今回は、デジタル教科書の導入による子どもの健康への影響についての記事だった。デジタル教材の導入により、子どもの見るべきものが増え、集中力が散漫になる事例や、シンガポールでの小学生にはタブレットを配布しない取組などが掲載されていた。

 文科省も今後は、デジタル教科書の正式教科書化に向けて、ガイドラインを作成する予定だという。デジタル教科書の導入学年や教科・科目ごとの使い方、健康面への配慮が盛り込まれるという。

 ただ、最後に掲載されている大正大特任教授のコメントが全てを物語っていると言えるだろう。それは、以下の内容だ。
「慎重に検討すべき課題が山積している。国は、デジタル化に伴う学習効果や弊害などをしっかり検証し、ガイドラインに反映させるべきだ。認知科学など専門家の意見や現場の実情を踏まえることが求められる」

 記事にもあるように、中教審でのデジタル教科書導入の議論は、「導入ありき」での議論だったし、委員がほぼ全員推進派だった。これでは中立的な議論もあったものではない。子どもの教育に大きな影響を及ぼす教科書の在り方なので、もっと検証すべきことがあったはずだ。賛成派、反対派の間で、激論が交わされてもよかったのではないか。しかし、そうとはならなかった。文科省の進める政策にお墨付きを与える御用学者の議論だけで終わってしまったのだ。読売新聞をはじめ、様々な媒体で、多くの識者が拙速なデジタル教科書の導入に疑問を呈していた。一旦進み始めた巨大プロジェクトは、中々後戻りできない。それどころか立ち止まることもできないという悪習を見ているようだ。

 果たして、このデジタル教科書問題、これからどうなっていくのだろう。日本の教育の大きな曲がり角になり、そしてその行先は学力の大幅低下がゴールになるのではないか。


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