再考デジタル教科書-中

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 12月5日の読売新聞「再考デジタル教科書」は、コスト面での問題提起だ。無償化されている教科書は、実際の値段も確かに安い。平均価格は2024年度で小学校用は443円、中学校用は571円という安さだ。参考書と比較とすると断然安い。
 ところがデジタル教科書を作成するとなると、コストがかかり、教科書会社の負担が増すのではないかという懸念を伝えている。さらにサーバー代の懸念もある。安定してデジタル教科書を活用しようとすると、ネット環境の充実が求められる。読売新聞が実施した教育委員会向けアンケートでも通信環境の不安定さを上げた回答が、90教委中61%に上ったという。

 この指摘の内容については、デジタル教科書を進める文科省-中教審も盲点であったのではないだろうか。デジタル教科書を導入するにあたって、その環境整備についてはあまり議論されていないように見える。今の政府の補正予算の中には、高校教育改革については3000億円という予算が組まれているが、デジタル教科書に関しては予算項目には見当たらない。今後、デジタル教科書を導入するならば、膨大な予算が必要になるかもしれない。

 面白いのは、財務省の幹部のコメントして
「コストに見合った学習効果があるのかを見ていくことになる」
と言っていることだ。財務省の指摘は正しい。デジタル教科書を導入して学力が向上したというエビデンスが得られていないのだ。このような政策に税金を投入するのは、愚策だろう。それでも文科相はデジタル教科書を導入しようとするだろう。最悪なのは、十分な予算措置が取られない中で、不十分な通信環境でデジタル教科書が学校現場で使われることだ。それこそ、教科書会社も莫大なコストをかけて作成し、検定についても膨大な作業をしたにも関わらず、いざ、使用するとなると、「ページがめくれない」となると、笑い話にもならない。

 これから財務省と文科省の間で、デジタル教科書導入に向けた予算措置について議論がされるだろう。高市政権の片山財務相は、数値化できない政策には金を付けないと明言している。まさに、デジタル教科書の学習効果をどのように財務省に示すのだろうか。世界的な潮流は、デジタル教科書を使用しても顕著な学習効果は得られない。逆に、学力が低下するというエビデンスがある。

 これから財務省と文科省の攻防が見ものである。


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