大阪府立高校の全ての学校で、海外の高校との姉妹校提携を行い、1校当たり20人程度の現地短期留学をさせることを大阪府教育委員会が決定したと、1月11日の読売新聞に掲載されていた。一人当たり10万円の補助を行い、残りは自己負担とするらしい。普段も姉妹校とオンラインで交流するため、提携先は、オーストラリアやフィリピンを想定しているという。この事業についての費用2.6億円を予算化するという。全国でも、全公立高校を対象にした留学制度は異例ということだ。それはそうだろう。今まで聞いたことがない。
この事業の目的は、基本は英語力の向上ということにあるが、もう一つの目標は、高校授業料の無償化制度の導入で私学志向が強まり、府立高校の約半数の学校で定員割れしたことに対する対策だ。どの高校に進学しても海外留学の可能性があるという「府立高校の魅力化」を目的としているのだろう。
「はて?」である。全ての府立高校は、この事業を望んでいるのだろうか?府立高校の校長会は、この制度を是としたのだろうか。府立高校には、様々な学校があり、学校によって学校目標も違うし、解決しなければならない課題も違う。おそらく、留学に関する業務は、学校に求められることになり、短期留学の付き添いも教員が行うことになるのだろう。教育委員会が引率してくれるわけがない。長期休業中の10日間程度、海外での引率を強いられることになる。私は、短期の海外研修を実施している高校で校長を務めていたが、この短期研修で誰が引率するのかというのは、相当大きな問題だった。海外との連携に力点を置いている教員がおれば良いが、すべての高校で海外留学に熱心な先生がいるわけではない。教育委員会は、どのような想定をしているのだろう。英語教員が引率すれば良いと安易に考えているのではないだろうか。
更に、すべての府立高校に海外校との提携、短期留学というニーズがあるのだろうか?私の経験で申し訳ないが、すべての学校でニーズがあるようには思えない。海外留学ではなく、他の課題が優先事項になっている高校もあるはずだ。例えば、非常勤講師や担任さえも補充が難しく四苦八苦している学校もあるだろう。様々な特性のある生徒が在籍して、そのサポートや進路実現に力を注いでいる学校もあるだろう。学校によって優先すべき課題は、それぞれなのだ。だからこそ、「自律的な学校経営」とか「校長のリーダーシップ」ということを府教育委員会は、今まで口が酸っぱくなるほど言ってきたのではないか。それが、いきなり一律の海外留学とは、ビックリである。海外留学の優先順位が低い学校からすれば、「余計な負担」以外何物でもない。
私なら、一律に全府立高校に義務付けることはせず、2.6億円の「海外姉妹校提携基金」を設立する。この基金を活用して、ニーズが高い高校では、1回20名程度の枠を超えて、人数も回数も短期留学を実施すればよいと思う。そうすれば、より自律的で魅力ある、そして校長のリーダーシップが発揮できる学校経営ができると思うのだが。
果たして現役の府立高校の校長は、どのように考えているのだろうか?意見を聞きたいものだ。
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