教育研究家の妹尾氏が、東洋経済education×ICTに
「文科省・中教審『質の高い教師』の養成、論点ズレてる?案の中身”3つのポイント”現場を苦しめる『対策してますポーズ』やめて」
というタイトルで寄稿した。読んでみると、胸がすく思いがする。
氏の指摘は、中教審・教員養成部会の「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策に関する論点整理(案)」に対してである。氏は、論点がいろいろあるとしながらも、以下の3点に絞っている。
【①スーパーマンモデル】個々人の能力向上への依存が強く、一人に過度な期待と負荷
【②即戦力重視で近視眼的】すぐに使える技術優先で、憲法、教育原理等の中長期に重要なことを軽視か
【③やりがいPRに傾斜】魅力・意義をもっと知ってもらえば事態は好転すると楽観視
この指摘は、至極もっともであり、是非文科省役人も中教審の委員の先生方にも読んでいただきたい。
この間、2030年の学習指導要領改訂の論議や、その前に行われた給特法の改正に向けた中教審の議論でも、そして今回の教員養成に関わる中教審での議論も、なぜこれほど教育現場と乖離するのかという事だ。その主たる原因は、文科省の政策立案担当の役人が現場の課題を十分に把握せずに立案していることにあると思う。
更に、その案について「審議」する中教審の委員が、大学教員がほとんどだという事だ。そして、その委員も文科省の「案」に基本的に賛成な委員がほとんどで、「案」に意見を述べても修正を求める意見がほとんどだ。これでは、文科省から出された「案」についても、チェック機能が働かず、議論も深まらないし、現場の声も反映されない。
読売新聞が論陣を張った「デジタル教科書問題」についても、委員の構成は賛成派ばかりだ。学者の中でも「デジタル教科書に対して慎重であるべき」という意見の学者は少なからずいる。賛否両論がある教育問題について議論をするならば、少なくとも中教審でしっかりと賛成派・反対派で議論をすべきだろう。
高度経済成長時代のように、予定調和的な議論を中教審で行っているようでは、日本の教育政策は、文科省の役人の頭の中からひねくりだしたものの枠を超えない。これだけ、先行きが見えないVUCAの時代に、高度経済成長の時代と同じようなスタイルで運営・議論されている文科省-中教審の体質にこそ問題がある。せめて、OECDが出したEducation2030を踏まえた議論をしてほしいものだ。白井 俊氏という素晴らしい官僚がいるのだから。
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