中央公論「維新の正体」


 私は、総合雑誌の文芸春秋を定期後続しており、中央公論も内容によって買うようにしている。学生時代は「世界」を読んでいたが、自分の左右の立つ位置が変化したのか、面白いとあまり思わなくなり、この2冊を読むようにしている。年が明けて文芸春秋が創刊100周年記念で何かと「100」がつく企画が多く、面白みに欠ける部分も散見される。今月号は、中央公論の「維新の正体」がなかなか面白かった。
 政治学者である待鳥氏と善教氏の対談は、学者としての維新の政策の魅力と限界を探ったもので、「野党第一党」までは伸びても政権政党に向けて成長するための課題を述べたもので、今の目玉である「身を切る改革」だけでは限界があるという指摘は、そうだろうと思う。「そうすれば何が必要?」というところまで突っ込まないのが、いかにも学者らしい。
 興味を惹かれたのは、維新の幹事長の藤田氏へのインタビュー記事である。自民党政治を既得権政治の微調整に留まっているとし、維新をベンチャー企業と位置付けているのは面白い。つまり、このままいけば、日本のマーケティング自体がつぶれてしまうのではないかという危機感から、5年・10年で市場を一新するという発想である。民間企業出身ならではの発想ではないかと思う。自民党にも優秀な人材がいるが、大企業で力を発揮するまで長い間雑巾がけを必要なように、自民党内で力を発揮するまでに時間がかかり、結局は大きな仕事をできず終わってしまうというのは的を得ているだろう。このあたりが、30代から40・50代の世代に魅力を感じさせているのだろう。
 また、ノンフィクションライターの松本氏が書いた記事「維新の組織風土と候補者集めの実情」は、維新議員の「粗製濫造」を指摘している。確かにいろいろな問題を起こす議員が多いのも維新の特徴である。だからと言って、維新の支持率は落ちることなく、後に述べるように逆に伸びているのは、身内にも厳しい対処であろう。「ダメなものはダメ」と明確に言い切ることが、有権者には少なくとも他党よりは心地よく感じるのではないか。さらに、議員候補選びのポイントして、「議員を職業にしない・させない」ということも目新しい。引退した松井氏が候補選びのポイントして、

「政治家を辞めても生活できる基盤があるほうが、議員の身分にこだわることなく、公約を一直線に、スピード感をもって実現できる」

と述べているのも気持ちが良い。他党が政治を職業としている議員が多い中で、この指摘は斬新である。
 「維新の正体」は様々な観点から維新の現状を分析しようとした記事で、プラス面もマイナス面も書かれているが、読む方からすれば「維新の潔さ」はこのあたりにあるのかと思わせてくれる特集だった。7月24日、このブログを書いている日の読売新聞に世論調査が掲載されており、内閣支持率が過去最低となっていた。次期衆院選で比例投票先でも自民党は38%→34%、日本維新の会は13%→15%、立憲民主党は9%→8%となっており、維新と立憲の差はダブルスコアに近い。政党支持率も維新が6%→9%、立憲が4%と変化がない。この数値をみれば、日本維新の会が野党第一党に躍り出ることも現実味を帯びてきた。現れては消える第3勢力の中で、未だにきちんと成長し続けるのは維新のみである。これからも目が離せないのではないか。

 最後に、大阪弁を話さない維新の代表が現れることを期待したいと思う。そうすれば、かなりイメージが変わるだろう。


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