3月31日にフジテレビ問題に関する第三者委員会報告がされた。それ以降、週末にかけて、ニュースはもちろんの事、様々な報道番組でこの問題が取り上げられた。多くの識者が見解を示しているように、「フジテレビは、組織の体をなしていない」「上場されている企業として有り得ない程、お粗末だ」ということだ。
今回の第三者委員会報告で、評価すべきところは、
① 中居氏と女性社員Aの間に、性暴力が存在したこと
②中居氏と女性社員Aの問題は、プライベートな問題ではなく、業務上の延長線上で起こった事象であること
この2点を明確に判断した点であろう。特に、②については、編成局のラインの3名が「プライベートな問題」として現場からの報告を捻じ曲げ、中居氏寄りのサイドに立った対応をしたことに関して、痛烈に批判した見解となっている。
以上の事は、多くの識者が語っていることだが、もう一つ釈然としないところがあった。というのは、
「なぜ、このような事象、そして体質がフジテレビに生まれ、起こったのか?」
という問題だ。この点について、第三者委員会は、2016年以降の事象を対象にしており、かつ、わずか2カ月余りの期間しか調査時間が無かったこともあるが、本来はフジテレビの体質問題まで踏み込まなくてはいけない。というのも、今回の事件を受けて、多くのスポンサーが契約を留保している。なぜなら、フジテレビの人権に対する意識、企業としてのガバナンスが、常識を逸脱しているからだ。フジテレビとしては、スポンサーに戻ってきてもらうためには、フジテレビの体質が変わり、企業として十分に信頼が得られると思ってもらわなければならない。その事を考えると、この報告書は十分とは言えない。
報告書が発表された日に、清水社長がフジテレビとしての今後の改善方針を発表した。ニュースを聞いていても、「当たり前のことを言っているだけ」と思ってしまう。そんな当たり前のこともできない会社なのに、今のフジテレビの幹部で体質は改革されるのですかと思うのだ。フジテレビの体質が変わったと世の中に理解されなければ、スポンサーも戻ってこないだろう。
ところで、企業としての体を、そして放送会社としての体を為していないフジテレビに対して総務省が、「厳重注意」と行政指導を行った。それでいいのかと思ってしまう。これほど、大きな事件を起こした放送会社に開局の権限を与えたままで良いのかと思うのだ。権力が不当に言論に介入するのは良くない。しかし、今回の件は、言論に関わる会社が人権侵害に関わるような事件を起こし、そしてガバナンスがまるでなっていないという事を、世間に露呈したのだ。放送を継続できる会社と言えるのだろうかということだ。
もう一つ思うことは、フジテレビは、港社長をはじめとした“編成ライン3人”に対して、背任行為として訴えないのかという事だ。アナウンス局で相談を受けたE氏、そして直接の上司だったF氏は、女性社員A氏に寄り添い、支援をしてきた。ところが、編成ラインのG氏に情報が伝わった段階で、性暴力から「男女間のトラブル」という認識に事件が変質してしまっている。その後、編成ライン3人を中心に、「男女間のトラブル」として間違った対応を行い、そして閉鎖的な記者会見を行い、フジテレビという会社に莫大な損失をもたらしたのだ。明らかに背任行為だろうと思うのだ。今後、このような動きはあるのだろうか。
最後に、今後は6月の株主総会が大きな山場となるだろう。まだまだ、フジテレビ問題は収束しない。第三者委員会報告が、フジテレビという会社の体質を世間に白日の下に明らかにしたことがスタートと言える。
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