デジタル教科書アルアル!

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 10月24日の読売新聞に「再考デジタル教育」(中)が掲載されていた。今回は、「デジタル教科書アルアル」だ。まずは、クラスの約30人が一斉にデジタル教科書を開くと、決まって3,4人の画面がフリーズするという問題。原因は簡単。通信環境がデジタル教科書を使用するという環境に整備されていないということだ。これでは、デジタル教科書を使用しようという気が起きない。
 次は、ログインに時間がかかる。パスワードの設定に課題があるなど。個人情報の保護のためにもパスワードの設定は必須だが、児童には難しいところもあるようだ。更に、端末の故障。これは大変だ。私が校長をしていた兵庫教育大学附属中学校でも生徒一人一台端末を導入していたが、故障が相次いだ。家庭にも持って帰って使用するため、通学時間に破損したり、休み時間に机から落としたり、と生徒が生活する空間と端末がある環境がうまくいかないのだ。つまり、学校は、全ての人が大人しく仕事をするオフィスではないということ。こういう環境に端末を置くと、予期せぬ事故やトラブルが発生してしまうのだ。まあ、慣れればトラブルも減るだろうと思うが、それにしても端末を教科書として使うとなると100%の準備が求められるので、ハードルは高い。
 最後に、これもよくあることだが、授業とは関係のないサイトを生徒が閲覧しているということだ。私も授業見学をしている時に、違うサイトを見ている生徒を発見し、ポンポンと肩を叩いた経験がある。授業をしている先生からすると、デジタル教科書を見ているのか、それとも違うサイトを見ているのかは、なかなか見分けがつきにくい。しかし、紙の教科書の場合は、教科書とは違う本を読んでいたり、スマホを見ていたりすると、生徒の目線が違うのですぐにわかり、指導もしやすいのだ。

 デジタル教科書を推進したい学者からすると、この「デジタル教科書アルアル」も乗り越えられる課題と見えるかもしれない。しかし、実際に授業をしている先生、特に小中の先生からすると、授業のリズムを乱す「アルアル」なのだ。こんなことに神経を使わされるぐらいなら、もっと授業に集中できる紙の教科書の方がよい、デジタルは参考程度で使うので十分と思ってしまうのではないだろうか。今一度、きちんとデジタル教科書の効用のエビデンスが求められる。


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