ソニー生命保険株式会社が2025年6月にインターネット上で、全国の中高校生1000人(中学生200人、高校生800人)を対象としてアンケートを実施した。中高生の将来についてのアンケートである。なかなか面白かったので、高校生に注目してデータを再編集してみた。
中高生が思い描く将来についての意識調査2025
最初に示すのは、「10年後の未来について、明るい見通しを持っているか、不安を抱いているか」というアンケート結果である。

世相を反映しているのか、「明るい+どちらかと言えば明るい」は、
57.2%→54.0%
と減少している。
この不安がより具体的になっているのが、
「10年後の日本について、明るい見通しをもっているか、不安を抱いているか」
という質問と、
「10年後の世界について、明るい見通しをもっているか、不安を抱いているか」
という質問だ。この結果の経年変化は以下のような結果になっている。


日本について明るい見通しを持っているのが、
28.7%→22.8%
世界について明るい見通しを持っているのが、
35.7%→28.1%
といずれもが大きく減少している。わずか1年の間に大幅に減少したことは、ある意味興味深い結果である。高校生が、このような認識を持っている中で、将来の夢を聞いてみたのが、次のグラフである。

この結果をどのように考えれば良いだろうか。将来の不安が増す中で、「安定した毎日を送りたい」気持ちは分かるし、「好きなことを仕事」にしたり、「趣味を充実させて生きて」いければ、良いだろうと思う。個人の生活の充実をめざし、いわゆる「ワーク&ライフ」の充実をめざすという事なのだろう。
ただ、そんな個人の生活の幸福を追求できる程、社会は優しいのだろうか。1960年代から始まった高度経済成長の時代なら、個人の生活の追求も有りだろうし、また可能だろう。しかし、今の日本も世界も「一寸先は闇」である。ウクライナ戦争の勃発やトランプ関税に見られるように、まさに「VUCAの時代」なのだ。
このような時代を生き抜くために、OECDの2030Educationは、子どもに求める資質として「wellbeingをめざすAgency」を設定したのである。Agencyとは、社会を変革し、創造する力である。個人の生活を充実させることのみに使われる力ではない。このアンケート結果からは、日本の若者にAgencyは育っていないことが判明した。
現在、文科省・中央教育委審議会では、2030年度からの学習指導要領が検討されているが、Agencyには注目されていない。本当にこんな状況で良いのだろうかと思ってしまう。
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