文科省が、スクールロイヤーについての調査「教育行政に係る法務相談体制の整備等に関する調査」を発表した。2023年度の調査をまとめたものだ。どんな調査結果か興味があったので、
教育行政に係る法務相談体制の整備等に関する調査
の調査結果からデータを抜き取り、グラフを作成した。
(1)スクールロイヤーの配置状況
各自治体(都道府県・政令指定都市・中核都市・市町村など)でスクールロイヤーを配置している割合を示したのが次のグラフである。
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各自治体とも若干の変動はあるが、基本的に増加傾向にある。ただ、基礎自治体である市町村などについては、15%に満たない自治体でしか配置されていない。
(2)学校・教育委員会がスクールロイヤーに依頼可能な業務内容
次に示すグラフは、学校・教育委員会がスクールロイヤーに依頼できる業務内容である。「助言・アドバイス」については、配置されているすべての自治体で依頼できる業務内容となっている。当然だろう。これが依頼できないとなっては話にならない。問題は、「保護者との面談への同席業務」「交渉における代理業務」である。この業務が、30%に達していない。つまり、弁護士としてのアドバイスは聞くことができるが、ほとんどの場合、弁護士は同席してくれないし、学校に代わって交渉もしてくれないのだ。直接の保護者対応は、教育委員会というより学校、それも管理職ではなく教員が行うことが多いのだろう。弁護士のアドバイスを受けて、生半可な知識で保護者と交渉してもトラブルが深刻化するだけではないかと思うのだがどうだろう。「弁護士によると・・・」という言葉を出した瞬間、事態は悪化の方向に進むのだ。
学校現場として、一番行ってほしいのが「保護者との面談への同席業務」「交渉における代理業務」ではないか。そうでなければ、教員の働き方改革は一向に進まない。おそらく、この業務を行ってもらうとなると、費用も嵩むことが考えられる。この費用問題がかなり大きい。
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(3)スクールロイヤーに対する法務相談案件のうち、特に多い内容
次にスクールロイヤーに対する法務相談案件の内訳である。多いものを5つまで回答する複数回答である。やはり、「保護者からの苦情や要求に関わる案件」と「いじめに関わる対応」が群を抜いて多い。ほとんどの自治体が、80%近くから100%の割合で、この業務を上げている。特に「保護者からの苦情や要求に関わる案件」は、ほぼ9割以上を占めている。これをハインリッヒの法則を当てはめて考えた場合、以下のような比になる。
裁判になる重大案件:弁護士相談案件:学校・教育委員会で行う保護者対応=1:29:300
どれだけ、教員が保護者対応に追われているかわかるだろう。学校現場を経験した人なら、この数の比は、もっと多いと感じるのではないか。(2)にも関することだが、スクールロイヤーが少しでも保護者対応を肩代わりしてくれれば、教員負担は大きく減少するのである。
(4)今後、自治体の顧問弁護士とは別にスクールロイヤーに相談できる体制を新たに構築することは検討していない理由
次に示すグラフは、配置が進んでいない市町村などで、「今後、自治体の顧問弁護士とは別にスクールロイヤーに相談できる体制を新たに構築することは検討していない理由」である。回答は複数回答である。
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教育行政とは別に自治体の業務に関する顧問弁護士で十分という回答が6割である。基礎自治体にも様々な自治体があるので、自治体によっては事足りている場合もあるのだろう。しかし、「予算の確保が難しいため」というのが、4割近い。つまり、少なくない自治体の教育行政で、予算の確保が難しいためにスクールロイヤーの必要性は感じつつも配置できず、仕方なく自治体の顧問弁護士に頼っているという実態も垣間見える。
スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)に加え、スクールロイヤーの需要はますます高まっている。保護者の多様化というよりも、理不尽な要求を突きつけるモンスターペアレンツの増加で、「学校に言わなければ損!」という感覚が広まっているように思う。昨日のブログに取り上げた小学校教員の相談内容にもあったように「保護者対応」は教員にとって大きな負担なのだ。少しでもスクールロイヤーの配置が進むこと願う。
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