グローバル・サウスの本音


 3連休で読むはずの本をやっと読み終えた。新型コロナウイルスに感染し、療養を強いられた。その後も後遺症があり、鼻水、喉のイガイガは続いている。
 さて、読んだ本は、「ウクライナ侵攻とグローバル・サウス」(別府正一郎著)である。著者はNHKの記者で世界を飛び回っておらわれる。そのルポルタージュを読んだ。この間、世界は、欧米を中心とする民主主義陣営と、中露を中心とする専制主義国家、そしてインド・南アフリカ・ブラジルなどを中心とするグローバル・サウスの3陣営に分かれている。ウクライナ侵攻についても、グローバル・サウスの各国は、ロシアへの制裁や避難に対して距離を置いており、欧米はグローバル・サウスの取り込みに躍起になっている。しかし、今回の国連総会でも、グローバル・サウスの存在感は際立った。昨年度は、ゼレンスキー大統領の演説にスタンディングオベーションが起こったが、今年は大統領の対面での演説にも関わらず、空席さえ目立つ結果となった。その多くが、グローバル・サウスの国々だ。一体、グローバル・サウスの国々は、どのように考えているのだろうか。そのことを教えてくれるルポが掲載されていた。一部紹介したいと思う。

南アフリカのANC(アフリカ民族会議)の青年同盟で国際問題を担当するクレカニ・スコサナさんへのインタビューである。ロシアのウクライナの侵攻に対して別府氏が質問したことに対しては、ロシアの情報をそのまま鵜呑みにしたような返答をスコサナ氏はしている。すなわち、ウクライナの「ナチ化」である。最後に別府氏が

ーーーーー欧米への強い不信感を感じるが?
と尋ねると、彼は、

「フランス、ポルトガル、ベルギー、イギリスなどアフリカを植民地化した国々はそれについて謝罪すらしていない。そのような国々に指図される覚えはない。今でもアフリカに来て天然資源を好きなように持って行くが、アフリカからの移民の受け入れは拒否している。それならば、アフリカ大陸から出て行って欲しい」(p165引用)

強烈な反欧米意識である。初めて知ったこともあった。このような内容だ。

2021年5月28日、ドイツの当時のマース外相が、ドイツによる植民地支配を受けていたナミビアであった虐殺について謝罪した。問題となったのは1904年から1908年にかけて、植民地支配に抗議して蜂起した現地のヘレロやナマの人たち数万人が、ドイツ軍によって殺害された歴史だ。マース外相はジェノサイドだったと認めたうえで、「ドイツの歴史的、道義的な責任を踏まえて、ナミビアと犠牲者の子孫に許しを請う」と述べ公式に謝罪した。(p178引用)

著者も書いているように、「100年以上経っての謝罪」である。このような歴史があったのである。アフリカの人たちからすれば、欧米諸国の主張が「お前たちにウクライナ侵攻を非難する資格があるのか!お前たちがアフリカで行ってきたことをまずは真摯に謝罪しろ!」ということになる。ANC青年同盟のスコ氏がいうのももっともだと思える。この他にも、ウクライナ侵攻に関する報道で、欧米では「白人優位」と思われるような報道がなされていたことも紹介されていた。私たちは、このような状況をもっと知るべきだろう。日本のマスコミ報道だけでは見えない世界である。

さて、日本の立場である。著者は「日本もグローバル・ノース」の一員であり、世界からもそう見られている」と指摘する。まさにそうだろう。司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」の書き出しにある「誠に小さき国が開花期を迎えている」日本のその後は、「誠に小さき国が、帝国主義の強盗のまねごとをした」と言えるだろう。台湾・朝鮮半島を日本の領土とした。欧米に支配されていた東南アジアを、同じアジアの国である日本が「解放」したにも関わらず。その政策は、征服地域の文化や言語を守ろうとせず、「日本化」させることだった。戦後は、「エコノミック・アニマル」と称され、これらの国々と共存することより、利益追求に明け暮れた。挙句の果ての「売春ツアー」である。日本と日本人は、このような負の歴史を絶対忘れてはならない。日欧米が中心となって世界を動かす時代は、「日本の失われた30年」と同時に、過ぎ去っていったのだと自覚すべきだろう。


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