エントリーシートは選抜資料になりうるか


 大阪府が令和10年度入試から導入する特別枠入試に関する第4弾である。今回は、選抜資料について、特にエントリーシートについて言及したい。まずは、普通科から総合学科まで、全ての学校がどんな選抜資料をどの程度の割合で採用しているかが次のグラフだ。明らかに、学力検査の成績、調査書を資料に採用している割合が高い。厳密に数値化された資料なので、合否判定に使いやすいことは、以前に言及した。

 エントリーシートは、全体の27.5%が採用しており、資料としては3番目に多い。私が校長をしている時から、アドミッションポリシーに極めて合致している受験生をボーダーゾーン内で優先的に合格させる入試が導入され、全受験生にエントリーシートを提出させるようになった。選抜の対象になるのは、ボーダーゾーンに入った受験生のみだが、私は入試の最終責任者として、このエントリーシートを全て読んでいた。中々面白いのである。一人一人の受験生の顔は浮かばないが、受験生の中学校での活動や高校進学への想いが伝わってくるのだ。選抜基準は、「アドミッションポリシーに極めて合致している」という事だったので、エントリーシートの内容がアドミッションポリシーに全て合致していないと合格にしなかった。
 この制度が導入された当初から、「本人の力でどこまで書いたかわからない。家族、学校(担任)、塾など第三者の介入が容易である」という指摘があった。確かに、エントリーシートを読んでいて、明らかに学校の指導があると思われるエントリーシートもあったが、そういう受験生は、合格まで至らないというのが常だった。
 ところで、生成AIが世の中に登場して、エントリーシートの持つ意味が大きく変容したと思うのだ。第三者だけではなく、端からAIが介入して作成されたエントリーシートが登場する可能性が極めて高くなったのである。だから、エントリーシートを選抜資料に採用する場合は、慎重になる必要がある。

 エントリーシートを選抜資料に採用する場合は、必ず面接・プレゼンテーションなど、受験生本人と直に質問したり、発表させたりする機会が必要だ。AIが素晴らしいエントリーシートを作成しても、受験生に話をさせれば、そして一つ二つ質問すれば、「化けの皮」はすぐ剝がれるのだ。だから、面接・実技検査・プレゼン・作文・グループディスカッション・グループワークなどとセットで選抜資料としなければならない。ところが、このような選抜方法を採用している学校は、極めて少ないと言える。これでは、AIが受験に介入することを許してしまうことにならないか。

 大阪府教育委員会は、特別枠入試の構築に際して、各校に以上の点に関する注意喚起を行ったのだろうか。おそらくしていないだろう。教育委員会の政策立案能力の劣化が著しい。


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