ウクライナは本当の負けるのか?

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 苦境に立たされている。今年5月~6月に行われた反転攻勢は、不発に終わった。ロシアが占領した地域に強固な塹壕を張り巡らし、欧米の最新兵器での侵攻を阻止したのだ。ウクライナに十分な空軍があり、制空権を確保していれば結果は違ったかもしれない。アメリカの最新型戦闘機の配備が遅れていることが、戦術的には大きい。強固に築かれた塹壕基地は、地上からの制圧はかなり難しいからだ。日露戦争の203高地での戦いで明白である。

 この反転攻勢の不発により、欧米では「支援疲れ」が出ている。そんなところに発生したのが中東紛争であり、アメリカは共和党を中心に、完全に風向きが変わってしまった。「ウクライナよりもイスラエルだ!」なのだ。ウクライナへの武器供与が、アメリカ議会で承認されないのだ。国力では、圧倒的にロシアがウクライナの上である。そのロシアと戦うには、民主主義陣営である欧米の支援が必須なのである。本当に、西側諸国はウクライナを見捨てるのだろうか。この戦争で、ロシアが勝利すれば、世界情勢は大きく変わる。専制主義国家が勢いづくばかりではなく、アメリカの影響力が極端に落ちるだろう。確かにウクライナと欧米との間に軍事同盟関係はない。しかし、民主主義をめざすウクライナは、専制主義国家であるロシアの侵略を受け、民主主義か専制主義かの最前線で戦っているのである。このウクライナを欧米が見捨てたら、日本を含め同盟関係にある国々は、アメリカはどこまで支援をしてくれるのだろうかと疑念を持つだろう。トランプが当選すれば、なおさらだ。アメリカの事しか考えない。

 確かに、直接軍事支援をしていない日本と比べてNATO諸国は苦しい。ロシアからの天然ガスの供給を停められ、エネルギー高、物価高に喘いでいる。そんな苦しさに付け込むのが、ポピュリズムである。ポピュリズムは大衆迎合といわれるが、正しい意味を体現しているとは思えない。ポピュリズムには、もう一つの側面がある。扇動政治である。このことが、塩野七生さんの「ギリシャ人の物語」を読んでいてよく分かった。まだ文庫本2巻であるが、ギリシャの古代民主主義の絶頂期を作ったペリクレスの死後に、民衆を扇動することで出現したクレオンという政治家がいた。彼は、ペロポネソス戦役で、アテネとスパルタの関係が不安定化することを扇動するのである。そして、戦争に導いていく。しかし、扇動しかできない指導者に軍の指揮はできない。結局、彼はあっけなく戦死する。
 
 民主主義は確かに面倒くさい。そして時間も浪費する。しかし、専制主義国家よりもよほど良い(はずだ)。ペリクレスが唯一の武器としたのは、言葉だ。ウクライナのゼレンスキー大統領は、当初は言葉を武器にしながら、国民を鼓舞し、世界を味方につけようとした。しかし、戦況が硬直化する中で、その「言葉」も限界にきているように見える。

アメリカよ!本当にウクライナを見捨てるのか!本当にそれで良いと思っているのか!


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