ウクライナの障がい者

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 5月17日土曜日の朝7時のニュースを見ていた。現在、ロシアとウクライナはトルコの仲介で停戦交渉なるものを行っている。双方の溝はかなり深く、停戦合意までは中々至らないだろう。プーチンのウクライナの領土獲得、中立化という無力化への意欲はすさまじい。そんな中で、NHKのカッテリーナディレクターのリポートがあった。カッテリーナさんは、ウクライナ出身で日本に留学し、NHKに就職したという人である。以前にも故郷ウクライナに戻り、家族や友人に会うというレポートをしていた。この戦争が、彼女の知っているウクライナにどれほど深刻なダメージを与えたか、知人の変化を見ることでリアルに伝えていた記憶がある。

 今回のリポートは、戦争によってけがを負い、障がい者になった兵士たちのリポートである。衝撃的であったのは次の事実だ。ウクライナでは、祖国を防衛している兵士たちは、高いリスペクトを得ていると聞いていた。事実そうなのだろう。しかし、足を失って義足で街を歩いていたりすると、奇異の目で見られるという。それだけではなく、なぜ義足を見せているのかとか、長ズボンをなぜ履かないのかという誹謗中傷まであるというのだ。「なんだこれは!」と思ってニュースを聞いていたら、衝撃の事実が報告された。そもそも、ソ連時代、障がい者は、社会の片隅に追いやられていたというのである。カッテリーナさん自身も含め、障がいのある人との交わりは、ほとんどなかったというのだ。なぜ、こんなことになっているのだろうか。それは、障がい者は、労働に貢献できないという考えによるソ連の政策だという。だから、街の郊外の施設などに押し込められて、社会から隔離されていたのだというのだ。ビックリである。これが社会主義の実態か、と改めて認識させられた。人権という観点が極めて薄いのである。

 それでも、レポートの後半には、地雷除去のために失明した元兵士の方が、youtubeや学校での講演などにより、障がい者への理解を広めている活動が紹介された。今の日本の感覚で言えば、半世紀ほど遅れている。
 
 私は、20代の頃、ソ連という国にある種の尊敬の念を持っていた。ゴルバチョフ氏を尊敬していた。しかし、今では、そういう思いはない。ソ連という国の暗黒の側面が、また一つ浮かび上がったレポートだった。


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